現在、TOTOギャラリー・間では、吉岡賞、住宅建築賞金賞など数々の賞を受賞し、活躍の場を広げている建築家 中川エリカ氏の個展「中川エリカ展 JOY in Architecture」が開催されています。
本展では設計の現場で活用されてきたさまざまなスケールの模型を一挙に公開。中川氏が考える建築の「よろこび(JOY)」が会場いっぱいに並んでいます。本展のタイトルは「JOY in Architecture」ですが、inの部分をofにしなかったのは、建築"の"喜びではなく、建築"による"喜びを表現したいという思いが込められているからです。
「私は建築を考えるとき、どんなカタチが良いか、と同時に、そのカタチがどんな使い方を生み出すのか、身体にどんな感覚をもたらすのか、ということを大事にしています」と中川氏。
「また、建築が周辺環境とどのように補い合うことができるのか、ということも大事にしています。建築よりも小さなものと大きなもの、言葉にさえできないものを建築と同時に検討していくためには、身体性をもった巨大で具体的で詳細な模型が必要なのです」とコメントを寄せています。
本展に向けて模型の1/20模型をつくって、模型をすべて配置すると会場がどれくらいの密度になるのかを検証したそうなのですが、その模型を会場で見ることができます。
2枚目の画像は、ギャラリーのテラス展示の模型です。頭上にロープを張り巡らし、このテラスに降り注ぐ風と光をどのように取り込むのか検討が重ねられました。このために風速や、使用するロープの種類による風速の低減効果などの研究も行ったそうです。
実際のテラスの様子がこちら。日光が眩し過ぎない程度に効率よく取り込まれ、テラスに置かれた模型をより美しく見せていました。日が落ちる時間帯でも、ライトアップされたテラスは幻想的で十分にその魅力を感じることができます。
3階では、事務所全員でリサーチに行った南米チリでの発見と共に、それらの体験がどのように設計と連続していくのかを、模型と写真を通して知ることができます。
例えばこちらは、住宅街のとある門先のごみ箱。左に「8」という番号が見えますが、この数字に対応する写真を見ると、ごみ箱や周りの草木がこの場所にある理由や、素材のもたらす効果などが記載されています。すべて事細かに書かれているため1つ1つ見ていくと、時間がたつのも忘れてしまいそうになるほど。
中川氏が「この展覧会では、現時点で思いつく限りのスタディやリサーチの実践が一堂に会しています」と語る通り、隅から隅まで建築のよろこびを堪能できる本展。2月には西沢大良氏、西沢立衛氏、乾久美子氏を招いてのギャラリートークも順次オンライン公開予定とのことですので、ぜひチェックを。
編集部 高橋
中川エリカ展 JOY in Architecture
会場:TOTOギャラリー・間
会期:2021年1月21日(木)~3月21日(日)※事前予約制
開催時間:11:00~18:00(緊急事態宣言下は17:00まで)
休館日:月曜・祝日 ただし3月20日(土・祝)は開館
入場料:無料
公式サイト:(URLをクリックすると外部サイトへ移動します)
https://jp.toto.com/gallerma