国内外から優れた映画が一堂に集結する「東京国際映画祭」が2020年10月31日(土)から11月9日(月)まで開催されました。
新型コロナウイルス感染症の影響で、外国の映画人の訪日が困難になってしまった本年。映画業界全体の「映画館に行こう!」キャンペーンと連携した企画が行われ、例年とは異なる形での開催となりました。
オープニングセレモニーを飾ったのは、フィルム・スコア・フィルハーモニック・オーケストラ(通称フィルフィル)。 映画やテレビ、ゲーム、舞台などのサウンドトラックから、厳選した企画とオリジナルスコアを使用し公演を行っているアマチュアオーケストラです。
舞台上では、映画のテーマ曲などがメドレー形式で壮大に奏でられました。映画のワンシーンが次々と目に浮かんでくるようで、その迫力に客席では涙を流す人も。
今年のオープニング作品となったのは、人生から見放された3人の負け犬たちが、リングの上で巡り合う物語りを描いた『アンダードッグ』。セレモニーには、武正晴監督、キャストの北村匠海、森山未來(リモートでの参加)、瀧内公美、脚本家の足立紳、佐藤現プロデューサーが登壇しました。
武監督は、本作がキャストあってこその映画であったとプロジェクトの始まりを振り返りつつ「キャストはみんな、全身全霊をかけて演じてくれました。今年の1、2月に撮影をし、新型コロナウイルス感染症で世の中が混乱の最中でも、編集作業を進めました。映画の公開は、困難に打ち勝った証のようでとても感慨深いです」とコメント。
続けて、オープニング作品として取り上げられたことについて「こういう場を与えていただけると『やっぱり、映画製作はやめられないな』と思います」と映画への熱い気持ちを述べました。
アンバサダーを務めたのは俳優の役所広司。「準備の苦労は大変だったかと思います」とスタッフの苦労を労い「映画をリアルにスクリーンで見られることは、ファンにとって最高のプレゼントではないでしょうか」と笑顔を見せました。
毎年の見所となるのは、世界各国からの新作がグランプリを競うコンペティション部門ですが、今年は「コンペティション」アジアの新鋭監督を集めた「アジアの未来」、日本映画の気鋭作品をそろえた「日本映画スプラッシュ」の3部門を1つの部門に統合。新しく「TOKYOプレミア2020」が誕生しました。
この部門では、その中の全作品を対象に観客の投票で決まる「観客賞」が設けられています。観客の審美眼も試される今回でしたが、そんな名誉ある賞に見事選ばれたのは、大九明子監督による「私をくいとめて」。
綿矢りさの同名小説を映像化した本作は、"おひとりさま"生活を満喫している31歳の黒田みつ子と歳下男子の、あと1歩近づけない2人の恋模様を描いた崖っぷちロマンス。
大九監督は3年前に『勝手にふるえてろ』で観客賞を受賞したことを振り返りつつ「あの時とは世界はまったく違っていて、映画祭も違った形となりました。劇場まで足を運んだ皆さんの貴重な1票がこの賞に繋がったのだと思うと、とても感慨深いです」とコメント。
みつ子を演じたのんも「映画は観客の皆さんに見てもらって初めて完成するものだと思っています。この賞を大切に受け止めたいと思います」と笑顔を見せました。
新型コロナウイルスで先行きの見えない中でも、私たちに日々の潤いと勇気を与えてくれる映画。大きなスクリーンの前で、見ず知らずの者が同じものを見て、涙を流したり、大笑いしたり。「今こそ映画を!」。この言葉がぴったりの、スペシャルな映画祭となりました。
編集部 高橋
第33回 東京国際映画祭
会場:六本木ヒルズ、EXシアター六本木(港区)、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場(千代田区)、東京国際フォーラム(千代田区)ほか 都内の各劇場及び施設・ホールを使用
会期:2020年10月31日(土)〜11月9日(月) ※終了しました
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://2020.tiff-jp.net/ja/