現在、国立新美術館では「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」が開催されています。本展は、2018年にフランスのパリで開催された「MANGA⇔TOKYO」展の凱旋展覧会。
都市〈東京〉の特徴や変化を鏡のように映し出してきた、日本のマンガ・アニメ・ゲーム・特撮と東京の関係を、マンガ原画やアニメ・ゲームの制作資料、映像などと都市模型で辿っています。
入ってすぐのところには巨大な東京のジオラマがあり、その向こうのビデオウォールには東京を舞台にしたアニメや特撮が映し出されていました。模型の範囲は山手線よりも大きく、北は池袋の乙女ロード、南は羽田空港、西は新宿副都心、東はスカイツリーと隅田川をカバーしています。
最初のセクションでは、特撮映画「ゴジラ」、マンガ・アニメ「AKIRA」、アニメ「エヴァンゲリオン」シリーズなどで東京がいかに破壊されてきたか、そして復興してきたかを示します。世界的にも地震などの災害が多い日本ですが、アニメによる東京の破壊と復興の中には、過去や未来の災害に対する、日本住民の感覚が映し出されているのかもしれません。
次のセクションのテーマは「東京の日常」です。まずは時代をさかのぼり「江戸」の日常から。庶民、遊女、武士の暮らし。それらは現代のマンガでも頻繁に描かれ、当時描かれた浮世絵などがその大きなヒントになっています。
時代は進んで近代化からポストモダンの時代まで。鎖国が終わって建物にも人々にも外国の影響が見られる明治時代、そして大正ロマンと言われる時代。歴史の授業や教科書よりも、マンガやドラマでそれらの時代を身近に感じていた方も多いのではないでしょうか。
そして時代は昭和に入り、戦争、戦後、高度成長期と進んでいきます。「あしたのジョー」といえば伝説的なボクシングマンガですが、キャラクターやストーリー展開の面白さだけでなく、こんなに時代や街の描写が濃い作品だったのかと驚かされました。
さらに時代は進み、バブルの時代へ。「シティハンター」や、わたせせいぞう作品の背景やファッションのバブリーさ。今では社会の資料集で見るような時代もあったことを、マンガやアニメはその作品の中に確かに残しています。
時代による展開を少し離れて、東京タワーや東京都庁舎といった建物の現れる作品群では、東京タワーに腰掛ける「魔法使いサリー」ちゃんがお出迎え。東京タワーを折ってしまうモスラの幼虫、セーラームーン、キングギドラなど、作品に我々のよく知るランドマークが登場することで、非日常であるフィクションが不意に我々の日常と繋がります。
そしていよいよ時代は現代へ。今も雑誌で連載中の高校生棋士を主人公にした人気マンガ「三月のライオン」や、国立新美術館も舞台の一つになっているアニメ「君の名は。」などが並びます。
ファンが作品の舞台になった場所を訪れる"聖地巡礼"は「君の名は。」でも話題になりましたが、それは作り手の描いたその場所が「行ってみたい」と思わせる魅力をたたえているから。アーティストに描きたい気持ちを起こさせるものこそが、東京の魅力なのでしょう。
東京という都市の現実と虚構を見ていくことで、東京が作品に影響を与えているだけでなく、虚構の"TOKYO"もまた現実の東京に影響を与えていることを知ることができる本展。これまでマンガ・アニメ・ゲーム・特撮に興味がなかった人にも、ぜひ見ていただきたい展覧会でした。
編集部 月島
MANGA都市TOKYO
ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020
会場:国立新美術館 企画展示室1E
会期:2020年8月12日(水)~11月3日(火・祝)
時間:10:00~18:00
※当面の間、夜間開館は行いません。
※入場は閉館の30分前まで
休館日:火曜日
※ただし、9月22日、11月3日は開館(9月23日(水)は休館)
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://manga-toshi-tokyo.jp/