六本木エリアのギャラリーを編集部スタッフの目線で紹介する「六本木ギャラリー探訪」。今回は、国内外問わず独自の表現を探索する作家を取り扱う「シュウゴアーツ」です。
(※今回のインタビューはコロナウィルス感染拡大防止のためメールインタビューにて実施しました)
お話を伺ったのは、オーナーの佐谷周吾さん。オープンの経緯について「2000年に父和彦の佐谷画廊から独立しました。ギャラリー命名にあたり、当時美術業界では佐谷と言えば父のことでしたので、「佐谷」を使うのは遠慮してスクラッチからスタートしたいと思案している中で、コレクターの宮津大輔さんが『シュウゴアーツ』を提案してくれました」と説明。
「苗字なしに名前だけを戴くギャラリー名は例がなく、恥ずかしさもありましたが、意外にも周囲の反応は『覚えやすい』とすこぶるよく、ありがたく頂戴しました」。シュウゴアーツにはそんな名前の由来があったんですね。
六本木を選ばれたのには、佐谷さんの先見の明がありました。「現在に至るまでに隅田川の永代橋から清澄のエリアで3度の地上げ・移転を経験しましたが、その間2003年に森美術館がオープンして、ギャラリーが六本木に集まってくるようになり、2007年にサントリー美術館と国立新美術館が六本木に開館するに及んで、六本木に美術を鑑賞する環境が整っていく様子を見ていました。
2016年に六本木の今の新しいギャラリービルcomplex665の建設にスタート時点から関わることができたのは幸運でしたが、以後も六本木にギャラリーが集まる流れは変わっていないと感じています」
しかし、ギャラリーをオープンするにあたり、多くの苦労があったそうです。「現代美術を見せるのにふさわしい空間を求めるのはひと苦労です。天井高、エレベーターの大きさなど、条件を満たす空間を得るのは容易ではありませんでした。
しかしながら、とりわけパンデミックの昨今、ギャラリーをオープンするよりも継続することの方が、はるかに苦労を伴うものだという実感は、私のみならずギャラリスト達が共有するところだと思います」と現在の課題についてもコメント。
「デザイン&アートの街」としての六本木について「振り返ると、2003年以降の六本木において美術やデザインのプログラムが充実していった動きは、かつて銀座が画廊街として認識されていた時代よりもはるかにダイナミズムが働いていると感じます。人々が視る喜びを求めて六本木に足を運びたくなる環境への整備・促進は、今後まだ大いに余地があると感じています」と野望を明かしてくださいました。
時代と国境を超えて様々なアーティストの活動を発信しているシュウゴアーツですが、紹介する作品・作家の選定に大事なのは"直観"だそう。「直観は氷山の一角ですが、その水面下には自身の知識経験嗜好の塊が隠れていて、それを一斉に動員しています。なので直観に従っても大丈夫、と自分に言い聞かせるために古今東西の歴史・史実と芸術的成果に触れ続けるようにしています。亡き父和彦のエッセイに『絵を見て火花が散ったとき』という一文がありますが、そういう表現もあると思います」
「いいアーティスト、いい作品を常に自信を持って提供できるギャラリーでありたいと願っています」と強い意志を語る佐谷さん。「ギャラリーのプロの立場でアーティストの創造性を受け止めて、いかにどのような力をそれに付加するか、がシュウゴアーツ全員の日々の命題です。一方で外からは見えにくい仕事ですが、縁あってルネサンスから20世紀までのマスターピースをお客様に紹介する仕事もここ数年手掛けるようになりました」。
8月31日(月)まで工事のためクローズをしているシュウゴアーツですが、現在はシュウゴアーツウェブサイトを会場に、オンラインショー第3弾として伝説的サウンドアーティストの藤本由紀夫の個展「Yukio Fujimoto Sound Album」(http://shugoarts.com/exhibitions/music-boxes/)を開催中。
「撮影はギャラリーで行いましたが、VR的な手法をあえて避け、我々ギャラリーのメンバーが作品を視る際の目線を反映したカメラワークに腐心しました。それがかえって新鮮に映るかもしれません。音量を大きくして観覧すればより楽しんでいただけると思います。また、9月にはギャラリースペースを再びオープンしてシュウゴアーツのアーティストたちによるギャラリーショーを予定しています」と見どころを語ってくださいました。
「シニアのアーティストについてはその集大成に向けてのお手伝い、若いアーティストについてはキャリアの充実。いずれもギャラリーの枠を超えたプロジェクトを視野に入れています」とこれからの展望を語る佐谷さん。
そのために集めているというアーティストごとの文献・動画は、ウェブサイトのライブラリー(http://shugoarts.com/library/)から誰でも観覧可能です。実際にギャラリーに足を運ぶことが難しい方も、ぜひ覗いてみてください。
編集部 高橋
「シュウゴアーツ」
住所:〒106-0032 東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F
TEL:03-6447-2234
営業時間:8月31日(月)まで工事のためギャラリーをクローズ
※9月1日(火)よりスペースを再開
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):http://shugoarts.com/