森美術館では2021年1月まで、多様な地域や世代から高い評価を得るアーティストの初期作品と最新作とをつないで紹介する「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」が開催されています。出展アーティストは草間彌生、李禹煥(リ・ウファン)、宮島達男、村上隆、奈良美智、杉本博司ら6名(姓のアルファベット順)。
我々を笑顔で迎えてくれたのは、村上隆氏による《Ko²ちゃん(プロジェクトKo²)》です。本作は、2次元のキャラクターを3次元化した、オタク文化を象徴する作品として知られています。
また、本展のために新しく制作された巨大絵画《チェリーブロッサム フジヤマ JAPAN》(2020年)は、観光名物としての絵画をアイロニカルに描き出した野心作。その大きさに圧倒されること間違いなしです。
床一面に砂利がひかれているのは、李禹煥(リ・ウファン)氏の展示空間。対象となるもの同士やその周囲にある空間や余白の出会い、相互依存関係によって作品が成立するという考え方は、出品作である《関係項-不協和音》(2004/2020年)や絵画シリーズ「対話」の新作2点にも一貫して描かれています。
水玉や網目模様、突起などの造形が繰り返される表現で知られる草間彌生氏。本展では、ニューヨークを拠点にしていた1960年頃の初期作品から、最新の絵画シリーズの「わが永遠の魂」までが紹介されています。
ニューヨークのアート・シーンに認められた1960年代から世界的に再評価された1990年代の作品、そして最新作までの変遷を通じて、草間作品に通底するコンセプトやメッセージを読み解くことができるまたとないチャンスとなっています。
宮島達男氏は、1980年代半ばからLEDを用いて1から9までの数字が変化するデジタルカウンターを使ったインスタレーションや立体作品を中心に制作を行っています。
「時の海--東北」は東日本大震災犠牲者の鎮魂と震災の記憶の継承を願い、最終的に3,000個のLEDカウンターを東北地方に恒久設置することを目指すプロジェクト。本展では、一般参加者がカウンターの速度を設定する様子などが収められた記録映像も公開中。美しさのなかに神秘的なものを感じることができます。
ここは、奈良美智氏の創作世界を体験できる展示空間になっています。初公開の15点を含む初期作品約20点や、写真のような大きなインスタレーション作品《Voyage of the Moon(Resting Moon) / Voyage of the Moon》(2006年)、新作《Miss Moonlight》(2020年)を含む大型肖像絵画、そして奈良本人の多様なコレクションなどが並んでおり、その一つ一つに足を止めてじっくりと眺めているうちに、時間を忘れてしまうほど。
写真や現代美術に限らず、古美術、建築、庭園、伝統芸能など、幅広い文化に精通する杉本博司氏。本展では、上記のような写真作品のほか、初映画作品《時間の庭のひとりごと》(2020年)を展示。杉本が神奈川県小田原市に設立した「小田原文化財団 江之浦測候所」(2017年開館)の四季折々が細部まで納められています。
本展では、アーティストが自らの言葉で作品を語る「音声ガイド」(有料)も。それぞれが自身のキャリアや自作について語る貴重な機会となっているので、利用すればさらに作品や作者の理解が深まります。
新型コロナウイルス感染症により変化の時代となった今、美術の本質的な役割とは何か、アーティストの成功とは何か、6人のトップランナーたちの目指す「世界」とはどこなのか。探りに来てみてはいかがでしょうか。
編集部 高橋
STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
会期:2020年7月31日(金)~2021年1月3日(日)
時間:10:00~22:00(最終入館 21:30)
※火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30)
※ただし9月22日(火・祝)、11月3日(火・祝)は22:00まで(最終入館 21:30)
休館日:会期中無休
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
www.mori.art.museum