現在PERROTIN東京では、"炭のアーティスト"として知られ、30年にわたり炭が持つ多様な側面や性質を探求してきたリー・ベー(李英培)の個展が開催中です。本展はパリ(2018年)、ニューヨーク(2019年)に続く、ペロタンでの3回目の個展となります。
韓国出身のリー氏は故郷・チョンド(清道)の民俗儀礼「タルチッテウギ」(※どんど焼きに似た火祭り)に着想を得て、作品を制作しています。タルチッテウギでは、旧暦上最初の満月の夜に、木と藁で"月の家"を作り、そこへ人々が願いを書いた紙を括り付けます。そして、その願いが煙に乗って空にとどくよう、火をつけるのだとか。
"月の家"が炭になると、人々はそのかけらを持ち帰り、お守りにしたり、食事に使ったりするそうです。氏はこうした伝統をもとに、炭("月の家")と余白(月光)を作品の上で共存させています。
「Issu du feu」では炭の欠片1つ1つが、まるでゴシック様式の大聖教のステンドグラスのように異なる光を反射しています。これは、キャンバス上に炭の欠片を密着、結束させ、表面を磨き上げているため。近付くと、それぞれ炭の形や反射の具合が違うことが分かり、見ていて飽きません。
こちらは、炭粉とメディウム(絵具に加えて透明感や光沢を出させたり、乾燥速度を調節させる液体)を混ぜて円を描き、乾燥後に同じモチーフの層を重ね、さらに同様の工程を数回繰り返した作品。左端に垂れた黒点が味を出しています。
作品で使う炭は、リー自身が制作したもの。1,500度の窯で2週間ほどノンストップで焼き、さらに2週間乾燥させます。乾燥後、キャンバスにのせる前に、飛散防止のため木炭を刻んで松脂に浸しているそうです。
「約30年、炭を使って作品を制作していますが、まだまだ探求できることがあると思っています」と氏。「アジアの文化では心を鍛え、スピリチュアルであることを重要視します。そこには、直感も共存します。同じように、私は常に異なる側面を組み合わせるようにしています。精神と感覚、明晰さと直観――。それらすべてを黒で表現することができます」と自身の作品について語っています。
現在、PERROTIN東京では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、事前予約制を取り入れています。静かなギャラリーで、作品と一対一で向き合えるチャンスでもありますので、ぜひこの機会に足を運んでみてはいかがでしょうか。
編集部 高橋
THE SUBLIME CHARCOAL LIGHT - 崇高な炭と光 -
会場:PERROTIN東京
会期:2020年7月3日(金)~8月29日(土)
開館時間:12:00~17:00
休館日:日曜、月曜、祝日
観覧料:無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.perrotin.com/