現在、国立新美術館ではルネサンスから20世紀初頭まで、約400年にわたるヨーロッパとハンガリーの絵画、素描、彫刻の名品130点が一堂に会する「ブダペスト―ヨーロッパとハンガリーの美術400年」が開催されています。
本展は、ハンガリー最大の美術館であるブダペスト国立西洋美術館とハンガリー・ナショナル・ギャラリーのコレクション展。日本とハンガリーの外交関係開設150周年を記念した展覧会であり、両館の所蔵品がまとまった形で来日するのは、25年ぶりだそうです。
入口で来場者を歓迎するのは、ルカス・クラーナハ(父)による《不釣り合いなカップル 老人と若い女》。
若い女が、自分に触れる裕福な老人からこっそり金を盗みとっており、若者に欲情する老人に対しての侮蔑や嘲りといった社会的批判が描かれています。こういったクラーナハの皮肉めいた作品は、都会の富裕な中産階級の間で人気を博しました。
展示されているのは絵画だけではありません。選りすぐられた11点の彫刻作品を通して、15世紀から18世紀末までのイタリアと北方ヨーロッパの彫刻の展開をたどることができます。
その中でも目を引く、写真2枚目の奇怪な表情の作品は、フランツ・クサーヴァ・メッサーシュミットの《性格表現の頭像》。ぎょっとしてしまうほど生々しいこの彫刻ですが、人間の多種多様な感情を顔の表情として描出することは、西洋美術の伝統的な課題でもあったそうです。
本展のポスタービジュアルにも使われた《紫のドレスの婦人》は、シニェイ・メルシェ・パールの妻が、この頃大流行していたタフタのバッスルドレス(スカートの下にバッスルといわれる腰当てを入れ、スカート後部のラインを美しく見せたもの)をまとい、休息している姿を描いた作品。
彼の初期の傑作である本作には、当時、美術批評家から賛否入り混じる反応が寄せられましたが、一般の観衆に瞬く間に愛され、今日では「ハンガリーのモナ・リザ」呼ばれることもあるほど、最も有名なハンガリー絵画のアイコン的作品となりました。
今回紹介したほかにも、約400年の西洋美術の歴史を彩った美術作品がズラリ。日本ではなかなか目にすることのできない作品と出会い、ゆったりとした時間の中で、その表現の豊かさ、歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか?
編集部 高橋
日本・ハンガリー外交関係開設150周年記念
ブダペスト国立西洋美術館&ハンガリー・ナショナル・ギャラリー所蔵
ブダペスト―ヨーロッパとハンガリーの美術400年
会場:国立新美術館 企画展示室1E
会期:開催中~2020年3月16日(月)
休館日:毎週火曜日
※ただし、2月11日(火・祝)は開館、2月12日(水)は休館
開館時間:10:00~18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
展覧会サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://budapest.exhn.jp