サントリー美術館では8月18日(日)まで、美術のテーマとなった「遊び」に着目し、双六やカルタ、舞踊やファッションなど、男女が熱中した楽しみごとの変遷をながめる「遊びの流儀 遊楽図の系譜」が開催されています。
古くから主要な画題であった「風俗図」や「遊楽図」には、平安時代以来の貝合や蹴鞠、羽子板など、情趣ゆたかな遊びに熱中する人々が描かれています。現在もお正月の風物詩として登場する羽子板ですが、室町時代にはすでにその文化は定着していたそうです。のちに羽子板は華麗に装飾され、贈答にも用いられました。写真左の《左義長羽子板》には表裏に正月行事である「左義長」と、宮中の貴人たちが描かれており、同図様のものは縁起物として喜ばれました。
中世以降には、中国の士君子のたしなみとして奨励された「琴棋書画(きんきしょが)」(琴・囲碁・書道・絵画)の影響を受けて、「琴棋書画図」が屛風や襖絵に数多く制作されました。
写真の《芒菊桐紋蒔絵碁笥・碁盤》は、戦国武将の豊臣秀吉から茶人の千利休に下賜されたものと伝わっています。中国から伝わったとされる囲碁は、平安時代の『源氏物語』や『枕草子』などの文学作品に、貴族の遊芸としてしばしば登場し、絵画作品にも多く取り入れられてきました。
近世に入ると、花見や風流踊りに興じる開放的な気分にあふれた「野外遊楽図」が流行しますが、江戸時代前期には幕藩体制が安定に向かうとともに、室内で親密に遊ぶ様子を描く「邸内遊楽図」に中心が移っていきました。
重要文化財《清水・住吉図蒔絵螺鈿西洋双六盤》(サントリー美術館所蔵)は、17世紀初めに西欧への輸出向けに制作された南蛮漆器の優品であり、いわゆる「西洋双六」 (バックギャモン)に使用されたゲーム盤です。
平蒔絵や螺鈿を主体とした技法、文様を隙間なく表す構成、幾何学的文様の仕様など、南蛮漆器の特徴が多くあらわれています。
ここで紹介したほかにも暮らしと「遊び」のかかわりを探る様々な作品が勢ぞろいしている本展。ある時は無邪気に笑顔を交わし、またある時は物憂げに遊び暮らした先人たちの、遊びの極意や、浮世を生きる術に、思いを馳せに来てみてはいかがでしょうか?
※作品保護のため、会期中展示替えを行います。
編集部 高橋
サントリー芸術財団50周年
遊びの流儀 遊楽図の系譜
会場:サントリー美術館
会期:2019年6月26日(水)~8月18日(日)
開館時間:10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)
※7月14日(日)、8月11日(日・祝)は20時まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
休館日:毎週火曜
※8月13日は18時まで開館
※shop×cafeは会期中無休
観覧料:一般1,300円、大学生・高校生1,000円、中学生以下無料
展覧会ホームページ(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2019_3/index.html