現在、森美術館では15周年記念展「六本木クロッシング2019展:つないでみる」が開催されています。「六本木クロッシング」は森美術館が3年に一度、日本の現代アートシーンを総覧する定点観測的な展覧会として2004年以来開催してきたシリーズ展です。本レポートでは、会場の様子を写真と共にお伝えします。
第6回目の開催となる今回は、シリーズ初の試みとして、森美術館の3人のキュレーターで共同キュレーションを行い、1970~1980年代生まれを中心とした日本のアーティスト25組が紹介されています。
テーマとなっている「ついないでみる」について森美術館の館長である南條史生氏は「現代社会は急激な変化と発展などによって引き起こされた政治・経済の問題、あるいは宗教や世界観の違い、突然の自然災害など様々な悲劇に満ちています。
そうした問題は人々を分裂し、多くの人々に苦しみと悲しみをもたらしています。そのような現代において"つながり"こそが、その困難を乗り越えるもっとも確かな方法なのかもしれません」とコメントしています。
本展には「テクノロジーをつかってみる」「社会を観察してみる」「ふたつをつないでみる」という3つのキーワードが存在しますが、一般的な美術館のようにきちんとしたセクション分けはされていません。これには、来場者に作品同士の有機的つながりを見出してほしいという思いが込められています。
こちらは林千歩による「人工的な恋人と本当の愛―Artificial Lover & True Love―」。人間とAIロボットのユーモア溢れる愛の物語を描くことで、生命や人間性の定義についてを我々に問いています。
奥の壁に映っているのは、人間とAIロボットの愛に溢れた日常生活をホームビデオで録画したかのような映像。恋愛映画の傑作『ゴースト/ニューヨークの幻』を模した、二人で身体を寄せ合いながらろくろを回すシーンなど、一人と一体の間には本物の愛が流れているように見えました。
1300匹もの猫が集うこの賑やかな作品は、竹川宣彰による「猫オリンピック:開会式」です。猫たちが無邪気にスポーツの祭典に興じる愛らしい様子を通じて、東京オリンピックに沸く現代日本を、普段とは違う視点から考えるきっかけを与えてくれます。この猫たちの中には、展覧会の準備で多忙を極めている時期に交通事故で亡くなってしまった、竹川氏の愛猫であるトラジロウも登場しているのだとか。
インタビューでも取り上げた、現代芸術活動チーム「目[mé]」による「景体」。部屋いっぱいに押し寄せる波に、知覚や感覚が強く揺さぶられ、まるで作品にそのまま吸い込まれていくようでした。
このほかにも、さまざまなジャンルのアーティストによる日本の「いま」を映し出した作品が並びました。現代に必要なつながりとは一体何なのか、そのためにどんなことができるのか、現代の分裂に向き合うためのヒントが散りばめられた展覧会でした。
編集部 高橋
森美術館15周年記念展
六本木クロッシング2019展:つないでみる
会場:森美術館
会期:2019年2月9日(土)~5月26日(日)
開館時間:10:00~22:00(最終入館 21:30)
※火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30)
※ただし4月30日(火)は22:00まで(最終入館 21:30)
※「六本木アートナイト2019」開催に伴い、5月25日(土)は翌朝6:00まで(最終入館 5:30)
観覧料:一般1,800円、学生(高校・大学生)1,200円、子供(4歳~中学生)600円、シニア(65歳以上)1,500円
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/roppongicrossing2019/