現在、国立新美術館では「トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美」が開催されています。本展では、イスタンブルのトプカプ宮殿博物館が所蔵する貴重な宝飾品、美術工芸品の数々を展示し、宮殿の生活、オスマン帝国の美意識や文化、芸術観に光をあてています。
トプカプ宮殿は、オスマン帝国時代にほぼ4世紀にわたり、国政の中心として栄えた場所です。数々の歴史が動いたその宮殿は、今日ではオスマン帝国の君主である歴代スルタンが所蔵した多くの宝物や武器類、調度品などを大切に保管する博物館となっています。
本展は3つの章に分かれており、漂う雰囲気も違っています。第1章は「トプカプ宮殿とスルタン」。スルタンは、身の回りの様々な調度品で自身の権威を示していたといわれています。
写真右手にある豪奢で存在感抜群の玉座は、スルタンの権威を象徴するものの中でも最も重要なもので、即位式、公的謁見などの儀式において使用されました。
こちらは、兵士が用いていた盾と剣ですが、武器にしては珍しいチューリップの柄がゴールドでデザインされています。後述しますが、オスマン帝国ではチューリップが定番の柄とされていました。そのため、本展ではたくさんのチューリップの柄が展示品に施されています。
第2章「オスマン帝国の宮殿とチューリップ」では、そのチューリップに焦点を当てています。
チューリップがオスマン帝国で愛された理由は、その名前にあります。チューリップを意味する単語「Lâle」。このLâleという単語をアラビア文字に置き換え、文字を入れ替えるとイスラーム教の唯一神であるアッラーになります。また、チューリップは1つの球根から1つの花が生じるため、神の唯一性を示唆するとも考えられていたのだとか。これらの観点から、チューリップは花々の中でも価値があるものとされていたそうです。
ここでは、サーイェバーンといわれる日蔭テントや食器など、調度品も展示されています。中には、バラ水入れという聞きなれない小物も。バラ水とはバラの花びらを水蒸気蒸留して作られた香水のことで、トルコでは来客があった際に、歓迎のしるしとしてバラ水を振りかける習慣があるそうです。展示品から、異国の生活を想像するのもおもしろいかもしれませんね。
第3章は「トルコと日本の交流」。親日国家として知られるトルコ。その理由の1つには、実業家であり茶人の山田寅次朗が、1980年のエルトゥールル号遭難事件の際の義捐金を届けるためトルコを訪れたこともあります。彼はその後もトルコと日本の関係を取り持ち、当時のスルタンに数々の古美術品を贈呈しました。
それらの作品は、現在でも博物館に所蔵されている日本の作品群の基礎となっています。日本で作られたものが、何十年もトルコに所蔵され、こうして生まれた国に帰ってきたと思うと、何だか不思議ですね。
アジアの西と東に位置するトルコと日本。地図の上ではとても遠いように見えますが、美術品を通してトルコを見ると、なんだかとても身近に感じられるような気がしました。日本にいながらトプカプ宮殿を体感できる空間で、トルコの歴史や文化に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
編集部 峰崎
トルコ文化年2019
トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美
会場:国立新美術館 企画展示室2E
会期:2019年3月20日(水)~5月20日(月)
開館時間:10:00~18:00
※毎週金曜日・土曜日は 20:00まで
※4月26日(金)~5月5日(日)は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
休館日:毎週火曜(ただし4月30日は開館)
観覧料:一般1,600円、大学生1,200円、高校生800円
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://turkey2019.exhn.jp/