東京ミッドタウンでは、2月21日(木)から2月24日(日)の4日間、東京ミッドタウンとアルスエレクトロニカによる、未来の社会をみんなで考える新しいお祭り「未来の学校祭 -SCHOOL OF THE FUTURE FESTIVAL-」が開催されました。本レポートでは、そのイベントの一部をご紹介します。
アルスエレクトロニカとは、オーストリアのリンツ市を拠点に40年にわたり「先端テクノロジーがもたらす新しい創造性と社会の未来像」を提案し続けている、世界的なクリエイティブ機関。毎年開催されるメディアアートに関する世界的なイベント「Ars Electronica Festival」は芸術・先端技術・文化の祭典として知られています。
アルスエレクトロニカ総合芸術監督であるゲルフリート・シュトッカーは本展について「我々のミッションは、アイデアやテクノロジーそのものを発展させていくことでなく、それらをどのように使うことで社会に還元できるのか、消化していけるのかを探ることです」と言及しています。
今回の学校祭のテーマは「ギリギリ」。イベントでは、社会でいま問わなければいけない問題に向き合う、境界を意識した"ギリギリ"な作品が登場しました。こちらは緻密なコンピュータ制御と、人工衛星にも使われるリアクションホイール(姿勢制御装置の一種)によるロボット機構で1本の足で立つ「Balance From Within」。
作者であるジェイコブ・トンスキーは「社会関係に内在する脆弱さというメタファーを、架空のものではなく本当に起こりうる危険性で表現したくて生まれた作品です」と本作を紹介しました。
第20回文化庁メディア芸術祭 エンターテインメント部門新人賞受賞作品でもある、不安定で偶発的な揺らぎを生み出す照明装置「ObOrO」。宙に浮く白いボールは、下にある送風機からの空気によって絶えず宙に浮いています。子どもが遊ぶことによって、ボールが落ちてしまう、そんなエラーも含め作品として展示されていました。
長谷川愛による「私はイルカを産みたい...」は、人口過剰と緊張した地球環境を考え、人間を増やすのでなく絶滅の危機にある種(例えばサメ、マグロ、イルカなど)を代理出産することを提案する、スペキュラティブな作品。生物としての欲求と倫理の境界について考えさせられる、神秘的な作品でした。
ウラニウム(脇田玲+石原航)、藤村龍至/RFAによる「虚構大学」は、世界で初めて信用スコアが取り入れられた、タイトルどおりの実際には存在しない虚構の入学。
脇田氏は「知能とは何か、大学とは何かが問われず、制度だけがテクノロジカルにいじられている現状に疑問を感じ、このプロジェクトを始めました」と本作にかける思いを語りました。2月23日には入試パフォーマンスが行われ、行列ができるほどの盛況ぶり。参加者が信用スコアにより合格/不合格に振り分けられました。
このほかにも、伝統的な西陣織にさまざまな異素材を緯糸(よこいと)として挿入し、色や硬さの動的変化を楽しめる「Heteroweave」や、和田永によるパフォーマンス「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」など、様々な「ギリギリ」に挑戦した展示やパフォーマンスが行われました。
六本木未来会議では、2月22日に行われた六本木、旅する美術教室 第5回「アートディレクターえぐちりかさんと学ぶメディアアートを通した未来の見方」のレポートも公開しています。併せてお楽しみください。
編集部 髙橋
未来の学校祭 -SCHOOL OF THE FUTURE FESTIVAL-
会期:2019年2月21日(木)~2019年2月24日(日) ※終了しました
開催時間:11:00~21:00
会場:東京ミッドタウン各所
主催:東京ミッドタウン
特別協力:アルスエレクトロニカ
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京
パートナー:
ANA ホールディングス/株式会社デンソー/株式会社博展/株式会社アイ・エム・ジェイ/株式会社東芝/東京エレクトロニツクシステムズ株式会社/オーストリア大使館/JDN/NewsTV/『WIRED』日本版/六本木未来会議/Media Ambition Tokyo[MAT]/デジタル・ショック/アンスティチュ・フランセ/慶應義塾大学 湘南キャンパス(SFC)
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://www.tokyo-midtown.com/jp/event/school_future/