現在PERROTIN東京では、インドを拠点に活動するアーティストであるバールティ・ケール氏の日本で初めての個展が行われています。本展の作品に通じるテーマは、"場所"と"空間"です。
この彫刻はケール氏が2年にわたって継続的に制作している《Intermediaries》。狭間に生きる人々というシリーズの作品で、インドの儀式や祭で使う像を壊し、そして再び組み合わせて作ったものです。一度破壊することによって、そのものが内に秘めている物語を知ることができると語っています。
こちらの2つはペアになっている作品で、どちらも割れた鏡を使用しています。西洋では、割れた鏡は不吉であるとされていますが、ケール氏はあえて割れた鏡を使うことで「鏡が割れただけで不吉であるという迷信を、私は信じない」という強い意志を示しています。
割れた鏡に第3の目の隠喩としてビンディ(ヒンドゥー教徒の女性が額に施す装飾)を組み合わせた円形の作品は、割れた鏡で自分自身を見るということ、そして、この作品を見ることで鑑賞者も見られているという2つの"見る"行為を表現しています。この作品の前にずっと立っていると、作品自体が大きな目のようにも見え、心が揺さぶられました。
鏡の作品以外にも、彼女の作品にはビンディが多く使用されています。かつては粉で、男女問わずつけるものであったビンディですが、今はステッカータイプのものまであるそう。ケール氏は紙や絵の具と同じように、作品を作るための素材としてこのビンディを使っています。
「ビンディは、(女性の象徴としてだけでなく)歴史、地理、政治、痛み、喜びなど抽象的なものとして、いろいろな意味でとらえられると思います」とケール氏。1つ1つの作品においてビンディが何を表しているのか、自分なりに考えてみるのも楽しいかもしれません。
本展でビンディが使用されているのは、地図を使った作品がほとんどです。地図は場所や空間を象徴していますが、これらの作品は、よく知らない場所の地図に、風、旅、波を模したビンディを用い、自分の地図を作ったものだそうです。
ケール氏は、自身の息子に「孤独を感じたら美術館へ行きなさい」と教えていたと話します。孤独感は誰にでも訪れるもの。そんな自分と向き合って前へ進むためにも、本展はその第1歩に欠かせない"心の地図"になるのではないでしょうか?
編集部 峰崎
information
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会場:PERROTIN東京
会期2018年11月14日(水)~12月15日(土)
開館時間:11:00~19:00
休館日:日曜、月曜、祝日
観覧料:無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.perrotin.com/