現在、TOTOギャラリー・間(ま)では、フランスを拠点に世界各地で活躍する建築家・田根剛の展覧会が開催されています。本展では、国内外の注目が高まっている田根氏の探求と実践のプロセスが、総合的に提示されています。展覧会開催に先駆けて行われた内覧会での様子をレポートします。
「まだ誰も見たことのない、経験したこともない、想像すらしたことのない、そんな建築をつくりたいんです」と田根氏。仕事に取り掛かる際は、考古学者のように遠い時間を遡り"場所の記憶"を掘り起こすことからはじめるのだそうです。
この作業について「そこでは、今日の世界から忘れ去られ、失われ、消えてしまったものに遭遇し、それらを発見する驚きと喜びがあります。その時、記憶は過去のものではなく、未来を生み出す原動力へと変貌するのです」とコメントしています。
こちらは、2012年に行われた新国立競技場基本構想国際デザイン競技(ザハ・ハディド案選出時)に参加し、11人のファイナリストに選ばれた「古墳スタジアム」。
自身も高校時代にサッカーに夢中になっていたそうで「サッカーの聖地だからこそ、自分で作りたいと情熱をかけて臨んだのですが、落選してしまい...。外苑前を通ると、いまだに悔しいです(笑)」と本作への熱い思いを述べました。
京友禅着物の老舗 千總(ちそう)の本社ビルは、日本の「わび・さび」に並ぶもう一つの美「かび・みやび(華美・雅)」のもとに建築されました。大胆でありながらも洗練された美しさは、創業450年を迎えた千總にぴったりです。
田根氏は、「場所には必ず記憶があります。建築はその記憶を継承し、未来をつくることができるのです。未来は必ず訪れます。建築はこの時代を動かし、未来のその先の記憶となります。まだ誰も見たことのない未来の記憶をつくること、建築にはそれができると信じています」と思いを述べていました。
本展は、東京オペラシティアートギャラリーとの同時開催。そちらでは「Digging & Building」と題して、場所をめぐる記憶を発掘し、掘り下げ、飛躍させる手法と、そこから生み出された「エストニア国立博物館」「古墳スタジアム」といった代表作や最新プロジェクトが、大型の模型や映像とともに展示されています。
二つのギャラリーに足を運んで、未来へとつながる田根氏の建築の世界にどっぷりと浸かってみてはいかがでしょうか?
編集部 髙橋
information
田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Search & Research
会場:TOTO ギャラリー・間
会期2018年10月18日(木)~12月23日(日・祝)
開館時間:10:00~18:00
休館日:月曜・祝日 ※12月23日(日)は開館
観覧料:無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://jp.toto.com/gallerma