現在、OTA FINE ARTSでは、中国・杭州で活動するアーティスト、チェン・ランの日本初個展「The Lament: Mountain Ghost」が開催されています。本展では、新作のビデオ作品や、抽象美を体現した立体作品が展示されています。
チェン・ラン氏は2017年にマドリード・フィルム・フェスティバルで最優秀監督賞を受賞するなど、西洋のポピュラーカルチャーを切り口とした、映画さながらの美しさを持つビデオ作品で知られています。
会場に足を踏み入れてまず目に飛び込んでくるのは、本展と同名の新作ビデオ作品です。タイトルにもなっている"Ghost"を表現する白塗りのダンサー。その体は部分的に透けていて、そこに楽器などの映像が加工されています。西洋の影響を受けた作品が多いチェン・ラン氏ですが、本作のもととなったのは中国古代の詩人・屈原の詩。古代中国の審美感覚、現代を生きる若者の舞、上海の都市風景と電子音楽が複雑に重なり、見る者を魅了します。
こちらは、表面に人工水晶と塗料を垂らして模様を作ったスクリーン。画面にはビデオ作品のテストとして作った映像が映っています。写真はビデオ作品を細切れにしたものが流れているシーンです。
人工水晶と塗料を垂らしたという点は同じですが、こちらの作品ではライトボックスに直に模様を描いています。屈原の詩からインスピレーションを受け、当時の国の理想や、王の在り方を表現しています。
壁に並んだ5つの額縁の中には、フィルム、CD、証明書が入っており、それぞれフィルムとCDの表面のスクラッチ、証明書が異なっています。CDの中にはあえて映像も何も入れておらず"見る人に自分の中で映像を想像してもらう"というコンセプトの作品なのだとか。斬新さがとても印象的でした。
シンバル、ドラムといった誰にでも見覚えのある楽器を芸術へと昇華させたこちらの作品。楽器自体も作家のスタジオにあったものを使っており、シンバルに止まっている蝶も、半身はスタジオに紛れ込んだ本物の蝶を、もう半身はフィルムで形作ったものを使用しています。
ドラムは人工水晶と塗料で色を付け、中にLEDのライトを仕込んでいます。淡い光を持つこの不思議なドラムは、独特の存在感を放っていました。
会場では、天井や入り口などいたるところで、LEDの柔らかな光が来場者を照らしていました。これは古代の模様からインスピレーションを得て、LEDの表面に樹脂で加工した作品です。
本展で使われた会場備え付けの照明は、CDを照らしているスポットライトのみ。ほとんどをこのLEDやライトボックスの明かりだけで会場を照らしているため、他の展示会と比べるとやや薄暗く、どこか神秘的な空気が漂っています。
また、映像から流れる電子音楽が会場中を包んでおり、他の展示を見ていても音楽が耳に入ってくるのが特徴です。スクリーンの前のベンチに腰掛け、ゆっくりと作品を味わえば、視覚や聴覚といった感覚が研ぎ澄まされ、作家の世界観に引きこまれること間違いなしです。
編集部 峰崎
information
The Lament: Mountain Ghost
会場:OTA FINE ARTS
会期:2018年10月13日(土)~2018年11月24日(土)
開館時間:11:00~19:00
休館日:日曜、月曜、祝日
入場料金:無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://www.otafinearts.com/jp/