現在、OTA FINE ARTSでは日常に散在する音や光、立体を用いて、鑑賞者の個人の記憶や経験をパラレルな異空間に誘うインスタレーションを創出する作家・久門剛史の個展「トンネル」が開催されています。
これまでの作品で、鏡を多用してきた久門氏ですが、今回は透明なガラスを用いて作品を制作しました。なぜガラスなのか。それは「気配を可視化させたい」という思いからです。
こちらは、ガラスを円の形にくりぬいて、モーターで斜めに動かしている作品。横から見ると、ガラスのエッジの部分がハッキリと見え、その構造が分かりますが、正面から見るとガラスは周りと馴染み、つかみどころのない影だけが様々な形にうごめいているようです。
透明な境界があいまいな"気配"のような実態として現れる本作。見る場所によっては、天井の電球がガラスに映し出されたり、外の明かりが反射したりと、本作単体の面白さだけでなく、置いてある場所や環境により変化する、周りを取り込む面白さがあります。
本展で展示されているものは、どれも今回のために作家が制作した新作ばかり。このドローイングもその一つ。本作は、作品に近付けば近づくほどその全貌に驚かされること間違いなしです。
この作品から浮かび上がるのは、円周率で描かれたおぼろげな"円"。絶対的な数値の円周率でありながらも、それによってできた"円"の存在は非常に不確かです。どの作品にも、円の中心となる部分があるので、近付いてそれらを探してみるのも楽しみ方の一つです。
本展で一番大きなインスタレーションがこちら。立てかけられた金属製の板には、うっすらと丸いスクラッチの跡があります。それを映し出すかのように、不定期に投射されるスポットライトの光は、形を持たないながらも強い存在感を放っています。
様々な形で表現された"円"が延長され空間性を持つと、本展のタイトルである「トンネル」になります。それは、目の前に広がる現実と別の時空間とをつなぐ通路としてのトンネルともいえるでしょう。モノの"気配"や"不在"を捉えて証明している本展で、不思議な体験をしてみてはいかがでしょうか?
編集部 髙橋
information
トンネル
会場:OTA FINE ARTS
会期:2018年7月20日(金)~2018年9月1日(土)
開館時間:11:00~19:00
休館日:日曜、月曜、祝日
観覧料:無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://www.otafinearts.com/jp/