現在、サントリー美術館では「琉球 美の宝庫」が開催されています。多くの島々からなる沖縄は、かつては琉球と称された海上王国でした。本展では、鮮やかな紅型に代表される染織や、中国・日本から刺激を受けて描かれた琉球絵画、螺鈿・沈金・箔絵などの技法を使ったきらびやかな漆芸作品を中心に琉球王国の美が紹介されています。
琉球の美が発展したのは、15世紀に統一王朝が成立し、400年以上にわたって東アジアを舞台に"万国津梁(世界の架け橋)"として繁栄したことが大きな理由です。琉球は様々な国の美しさを取り込み、独自の美を生み出していきました。
見所の1つとなっているのは、近年の東京でまとまって公開されることがなかった琉球絵画です。貿易が栄えた首里城下の賑わいを描写した絵画や、王女から下級士族の婦人を描いたとされる「琉球美人」など、当時の様子を多くの角度から知ることができます。
首里王府(琉球王国の統治組織)には、国際的なネットワークを通じてもたらされた中国や日本絵画の優れたコレクションがあったとされています。薩摩藩の絵師に学んだ人物もいる一方で、王府に命じられて中国の福州へ派遣された絵師も複数いたのだとか。
同じく見逃せないのは、国宝に指定された「琉球国王尚家関係資料」に含まれる珠玉のコレクションです。15世紀後半に初代尚円が国王に即位してから、琉球王国は尚家によって治められてきました。しかし明治政府が成立すると、琉球処分により19代尚泰の王位が廃され、沖縄県が設置、王国の文物の一部は東京へ移されました。
その後、戦災により沖縄の文化は大きな被害を受けますが、王家の至宝の数々は脈々と受け継がれており、2006年には尚家に継承されていた美術工芸品や文書・記録類が国宝である「琉球国王尚家関係資料」に指定されました。
12の金糸の帯に金・銀・珊瑚・水晶など7種類の玉が合計288個も留められた「玉冠(付簪)」や、打ち出しや線刻による美しいデザインで覆われた「美御前御揃」など、どの作品も大胆でありながら随所に細かいデザインが施されており、当時の技術の高さ、そして琉球の技師たちのこだわりを感じることができます。
海を越えてやってきた東アジアの美を結び合わせ、さらに新たな美を生み出した琉球王国。現代でもその美は色褪せることなく、新鮮な輝きを放っています。今はなき琉球王国から受け継がれてきた"美"。実際にその目で確かめてみてはいかがでしょうか?
※作品保護のため、会期中展示替えを行います。
編集部 髙橋
information
琉球 美の宝庫
会場:会場:サントリー美術館
会期:2018年7月18日(水)~9月2日(日)
開館時間:10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)
休館日:火曜日(※8月14日は18時まで開館)
入観料:一般1,300円、大学・高校1,000円、中学生以下無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2018_3/