現在、21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3ではフランスのショコラティエであるパトリック・ロジェの日本で初めての展覧会「TRAVELS TRAVEL(LER)」が7月2日(月)まで開催されています。ショコラティエにとって最高の栄誉にあたるM.O.F.(フランス国家最優秀職人章)を30歳という若さで授与されたロジェは、同時に芸術家としての顔も持ち合わせています。
フランスに8店舗、ベルギーに1店舗を展開している「PATRICK ROGER」のブティックは、ロジェの研ぎ澄まされた感性と創造への情熱を、そのまま具現化したようなチョコレートと彫刻作品で彩られ、訪れた人々からまるでアートギャラリーのようだと評されています。
ロジェは本展のタイトル「TRAVELS TRAVEL(LER)」について、「空想しながら鑑賞する、という意味を込めている。この展覧会では、鑑賞することはある種の旅であり、鑑賞者は39点の彫刻作品の世界を巡る旅によって空想を膨らませ、作品の真の姿をとらえることができるだろう。私は鑑賞者ひとりひとりに、それぞれの空想の"旅"を提供します」と話していました。
こちらは銀で作られた「ロブスター」。ピンと長く伸びた触角が特徴的です。金網という閉鎖空間に2匹を入れて対面させたことにより、"このあとは何が起こるのだろう"と、より鑑賞者の想像を刺激します。このほかにも様々な動物をモチーフにした作品がありました。
中でも目を引くのは、野性味溢れるサル目の作品。作家は、2016年にブティックにてサル目をテーマにしたチョコレートによる彫刻作品を複数発表していますが、本展でもブロンズでできた「チンパンジー」や、ジャイアントゴリラのスケッチが展示されていました。自然界の厳しさを物語るようなごわごわとした毛並みや、発達した筋肉などが丁寧に描写されています。
ロジェは何点かのスケッチを展示することによって、「作家自身ですべてのアイデアを構想し、スケッチを描いていることを鑑賞者に想起させ、また、そのスケッチがあることによって、鑑賞者の助けになれば」と語っていました。
手のひらほどの「小さいマンタ」の正面にあるのは、その何倍もの大きさの「マンタ」。どちらも同じマンタでありながら、そこに表現されているものは別物です。作品を鑑賞していると、マンタ以外にも真っ青な海や、色とりどりのサンゴが見えてくるようでした。
光を受けて輝きを放っているのは「磨かれた卵」。タイトル通りの光沢を、ブロンズのツヤがきれいに表現しています。このほかにも「傷ついた卵」「卵」と違う種類の卵の作品が展示されているので、その違いを見比べてみるのも面白いのではないでしょうか?
本展のキュレーションと展示デザインを務めたのは、数々の受賞歴をもつ空間デザイナーのリナ・ゴットメ。ゴットメは本展を、「素晴らしいショコラティエによる彫刻作品の世界を訪ねる旅に見立て、エネルギッシュな作品群の裏側にある時間との出会い、作品を理解し、体感する旅への招待です」とコメントしています。
ロジェの作品は、タイトルこそはシンプルなものですが、作品に込められた様々な思いは鑑賞者と作品との対話の数だけあります。39点のパトリック・ロジェの作品と共に、自分だけの空想の世界を旅してみてはいかがでしょうか。
編集部 髙橋
information
TRAVELS TRAVEL(LER)
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3
会期:2018年6月2日(土)~7月2日(月)
開館時間:10:00~19:00
休館日:火曜日
観覧料:無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.patrickroger.com/