東京ミッドタウン・デザインハブでは2018年5月11日(金)から5月27日(日)まで、「DMN Design Management EXPO 2018」が開催されました。本展では、デザインをビジネスに活かすことを「デザインマネジメント」ととらえ、急速に変わりゆく人々・ビジネス・社会とデザインとの関わり、これからのあるべき姿を模索します。
冒頭では3つの関係性、現状や問題が述べられています。顧客としての人々は、単に商品を求めるのではなく、自分と企業との関係(企業イメージなど)を考えるようになり、従業員としての人々も単にお金を稼ぐだけでなく、働き甲斐を求めるようになっています。
ビジネスでは製造業からサービス業への移行(Shift)、業界間の境界の消滅(Melt)、世界経済の重心の北半球から南半球への移行(Tilt)という大きな構造の変化が起こっています。
初めのセクションのキーワードは人々。人々とデザインの関わりは、「コ・デザイン」つまりデザイナーが一方的にデザインするのではなく、人々を招いて一緒に問題解決のデザインをしていく、という方向に変わってきています。この考えはオハイオ州立大学デザイン学部の准教授であるリズ・サンダースさんによるものです。
また、従業員である人々とデザインに対しては、同志社女子大学現代社会学部現代こども学科特任教授である上田信行さんの「プレイフルワーク」という考え方があります。これは仕事場そのものが学びの場であり、学びとは楽しむことであるため、もっと働くことを楽しもう、という考え方です。
従業員は、形にする・呼び起こす・書くといった方法で仕事への理解を深めて状況を把握し、一生懸命働く中にそれぞれの楽しみを見つける「プレイフルワーカー」となっていきます。
それらをサポートし、導いていく人は「プレイフルワーキングデザイナー」と呼ばれます。ここではカラフルな付箋や、仕事についてのキーワードが書かれたブロックなど、作業そのものに"何だろう"と好奇心を起こさせるようなデザインが置かれていました。
これも「Meta」というプレイフルワークツールの一つ。人間の思考のさらに深い部分に存在する「Meta思考」になるためには、物理的な環境が欠かせません。なので、繰り返し考えさせるような思考空間を作り、Meta思考を促しています。会場を訪れた際にも、すでに来場者のMeta思考が壁に貼られていました。
続くビジネスのセクションでは、Shift・Melt・Tiltといった環境変化の中で企業が成長していくためのデザイン・シンキングのメソッドが紹介されています。
メソッドがあってもイノベーションが起きにくい理由は、多くの企業に見られる"階層組織"が原因です。階層組織が得意とするのはルーティン・ワークであり、ルーティン・ワークの中でイノベーションを起こすことは非常に難しいことなのです。ここでは、企業がイノベーションを起こせるような組織になっているかの診断ツールがパネルで展示されていました。
最後のセクションは、社会。現在、私たちの生きる社会では持続性、継続性が大きな問題になっています。世界中の人々がリーダーシップを発揮し、地球を良い方向へもっていく必要がありますが、企業の中からもそういうリーダーシップが生まれ、共に問題に取り組んでいかなければなりません。
そして、問題があるということは、すなわち大きなビジネス機会がある、とも言えます。これまで企業は"自分たちが儲けるためにはある程度の環境破壊は仕方がない""どこかの国の人々を安い賃金で雇おう"といった「トレード・オフ」の考え方が主でしたが、いま企業に期待されているのは、そういった問題の根本的解決です。
本展を主催したDMN(ダイヤモンド・デザインマネジメント・ネットワーク)代表取締役の白根英昭さんは本展について「"デザイン"というものをビジネスのためのものでなく、社会のためや、人々のためというという、3つの重なる領域を基盤に、それらに対してどういった貢献ができるかを考えるきっかけになれば、と開催しました。人々・ビジネス・社会の問題を解決するのはこれからのデザイナーの役割だと思うので、それに向かって自分の仕事を広げていってほしいですね」と、コメントしています。
デザインの役割を改めて考え直すきっかけとなる展覧会でした。
編集部 石川
information
東京ミッドタウン・デザインハブ特別展
DMN Design Management EXPO 2018
会場:東京ミッドタウン・デザインハブ(ミッドタウン・タワー5F)
会期:2018年5月11日(金)~5月27日(日) ※終了しました
開館時間:11:00~19:00
観覧料:無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://ddmn.jp/dmexpo2018