現在、サントリー美術館では「ガレも愛した-清朝皇帝のガラス」が開催中です。本展では、中国でガラス工芸が飛躍的に発展した清王朝の時代のガラスを、ガレの作品とも比較しながら楽しむことができます。
この時代に中国でガラスが発展したのは、第4代康煕帝(在位1661~1722)が紫禁城内にガラス工房・玻璃廠を設置し、皇帝のためのガラス作りを開始したことがきっかけと言われています。
ガラスといえば、「透明性」と「はかなさ」が最大の魅力ですが、特に最盛期の清朝のガラスは趣が異なり、「透明」と「不透明」の狭間で、重厚で卓越した彫琢が際立っています。その類まれなる美しさは、フランス・アール・ヌーヴォー期を代表する芸術家エミール・ガレ(1846~1904)をも魅了し、彼の造形に取り込まれていきました。
「黄色花文壺」「黄色花鳥文七花弁形鉢」にも使われている黄色は、皇帝あるいは皇后専用の色として珍重されました。中国を育んだ黄色い大地の色、また陰陽五行思想と結びついた、根幹や中核を示す色として考えられていたそうです。地味過ぎず、それでいてはっと目を引く独特の黄色は、ガラスだからこそ表現できる色づかいと言えるでしょう。
「白地多色貼雨龍文瓶」は、乳白色ガラスを吹き成形して、4色の色ガラスを部分的に溶着し、戯れる4匹の雨龍と霊芝雲のモティーフを配しています。ガラスがまだ熱いうちに、部分的に別のガラスを貼り付ける「熱貼」は、ヨーロッパでは「アップリケ」と呼ばれました。
ガレは1890年代あたりから、自然を観察して得た装飾のモティーフと、器自体の形とを統一した作品を制作しました。花器「おだまき」は、今まさに蕾を開こうとしているおだまきの花の形を、そのまま器にしました。台座に伸びたピンク色の管のようなものは「距(きょ)」(花びらや"がく"の付け根にある突起部分)です。こんなところにも、植物学者であったガレのこだわりを感じます。
同じくガレによる花器「カトレア」では、翡翠を思わせる青緑色のガラスに、ピンク色のガラスを被せ、カトレアの花を浮彫りにしています。表には大輪のカトレアが、裏にはしおれたカトレアが施され、まるで生と死の表裏一体を表しているかのようでした。
本展では、写真撮影が可能なコーナーも設けられています。また、作品の周りをぐるりと一周することもできるので、360度の角度から堪能することができます。お気に入りの作品を写真に収め、ハッシュタグ「#清朝皇帝のガラス」を付けて、TwitterやInstagramなどに投稿し、感想をシェアするのも楽しみ方の一つですね。
本展では、中国ガラス工芸の長い歴史を辿ると同時に、その変遷や、ガレにどんな影響を与えたのかを、目の前の作品を通して知ることができました。繊細でありながらも、特別な存在感を放つガラス。その美しさはガレだけではなく、美術館を訪れた人をも魅了することでしょう。
編集部 髙橋
information
ガレも愛した-清朝皇帝のガラス
会場:サントリー美術館
会期:2018年4月25日(水)~7月1日(日)
開館時間:10:00~18:00(金・土曜日は20:00まで開館)
※5月26日(土)は六本木アートナイトのため24:00まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
休館日:火曜日(ただし6月26日は18時まで開館)
観覧料:一般1,300円、大学・高校生1,000円、中学生以下無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://suntory.jp/SMA/