現在、21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3では「Khadi インドの明日をつむぐ - Homage to Martand Singh -」展が開催されています。本展では、インドの「カディ(Khadi)」と呼ばれる綿布と、それに込められているものづくりに宿る精神が紹介されています。
インドを代表する伝統的な綿布カディは、チャルカという糸車でゆっくりと綿のわたから一本一本を手で紡ぎ、丁寧に手で織っていくことでつくられていきます。写真は、ヒンディー語で"農民の糸車"を指す「キサン・チャルカ」です。伝統的なチャルカよりコンパクトなサイズになっており、学校や家庭で多く使われています。
インド独立を指導したマハトマ・ガンジーは、チャルカとインドの関係について「農業を農民の胴体だとすれば、チャルカはその手足です。(略)インドを非暴力的手段で守る唯一の武器は、このチャルカしかないし、インドの本当の独立はこのチャルカから紡ぎ出されるカディなしには考えられません」と語っています。
インド・テキスタイルなどの幅広い文化復興活動で知られているマルタン・シンさんは、インドの独立、雇用、死生、創造という観点からカディを「自由の布」と呼び、この綿布で仕立てられる衣服、カディ・クルタを日常着として纏っていました。クルタは今日でも、セレモニーの正装として、ある時は寝間着として、多岐にわたる場面で着用されています。
108枚の生地見本からなるこのカタログは2002年1月30日(ガンジー 54回目の命日)に開催された「KHADI: The Fabric of Freedom」展によせて、100部限定でつくられました。シンさん自身がこの展覧会をキュレーションし、チームが2年かけてカディの調査のために国中を駆け回りました。会場内にはその一部が実際に展示してあります。近くで見ると、同じカディの中にもそれぞれ違う質感があるのに気づくことでしょう。
こちらも同じく「KHADI: The Fabric of Freedom」展で展示されたカディの衣服です。伝統とモダンが調和したこれらは、インド独立のシンボルだったカディが、ファッションの素材として定着したことを伝えています。カディ・クルタの"クルタ"は男性民族衣装の上着を指しますが、パンツは"パジャマ"と呼ばれており、日本語でも使われているパジャマの語源にもなっているのだとか。
ここでは実際のカディに触れることができます。カディには布地の密度を表す300や500などの品番があり、数字が大きくなればなるほど細い糸で編まれています。600番になると国宝となるものもあり、布の向こう側が透けて見えるほど。
展示品以外にも、会場内にはいくつものモニターが設置され、カディを紡ぐ人々の生活や、工場での作業、シンさんのインタビューなどを映し出していました。中にはカディそのものに映像を投影しているものも。
カディは単なる衣服にとどまらず、インドに住む人々の生活や歴史、スピリットが込められた綿布だということとが、視覚だけではなく、触覚を通して知ることができる展覧会でした。
編集部 髙橋
information
Khadi インドの明日をつむぐ
- Homage to Martand Singh -
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3
会期:2018年4月18日(水)~5月20日(日)
開館時間:10:00~19:00(入場は18:30まで)
休館日:火曜日(5月1日は開館)
観覧料:無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://www.2121designsight.jp/gallery3/khadi/