現在、東京ミッドタウン・デザインハブでは「地域×デザイン 2018 -まちとまちをつなぐプロジェクト-」が開催されています。今回のテーマは「移動する」「働く」「つなぐ」。3回目を迎える本展で、改めてデザインの視点から地域を見つめ直してみたいと思います。
入口で我々を迎えてくれるのは、不思議な被り物をした可愛らしい球体関節人形。彼らが被っているのは、青森県十和田市発の、人と人とをボーダーレスにつなげるコミュニケーションツール「ウマジン・Umagin」です。イラストレーターの安斉将さんによるこの作品は、2014年にグッドデザイン賞(コミュニケーションツール、地域づくり)を受賞 しています。会場では実際に被って楽しめるように、実物が置いてありました。
見た目の異様さ、面白さ、被った時のドキドキはその場にワクワクと連帯感を生み、初対面同士でも思わずにっこりとして仲良くなってしまうはず。その笑顔や元気をSNSなどで発信することにより、人と町がつながり、町と町がつながり、その輪はどんどん広がっていきます。「Umagin」には「Imagine」のI(私)からU(あなた)へ伝えたいという思いが込められています。eがないのはego(エゴ)を捨ててみんな友達になろうよ、という願いからなのだとか。
熊本地震をきっかけに誕生したBRIDGE KUMAMOTOによる「ブルーシードバッグ」。地震によって被害を受けた家屋の応急処置として大量に使われた ブルーシートを、回収・洗浄・縫製し、トートバッグにリメイクしています。悲しみを連想させる被災地のブルーシートを「復興の種(シード)」として捉え、ポジティブなものへと変化させました。
こちらの彫刻作品は富山県の南砺市井波地区でつくられたもの。その地域にある、職人に弟子入りできる宿「BED AND CRAFT」では、古民家を改修したゲストハウスに泊まりながら、町に点在する職人の工房に通い、じきじきに手ほどきを受けることができるそう。人口が約8000人の南砺市井波地区ですが、その中の200人は彫刻師。つまり40人に一人は彫刻師という稀な地域です。
このゲストハウスを運営している建築家・山川智嗣さんは、「昔は彫刻師など職人の方は、都会のデパートに出向いて販売会をしていたのですが、そうすると作る手を止めてしまうことになるし、作品の量も減ってしまいます。そこで、より知ってもらうためには、売りに行くのではなくて、来てもらうのがいいのではないかと考えました」と、宿を始めた経緯を明かしました。
「BED AND CRAFT」はオープンから1年で1000人泊を達成。その中のほとんどが海外からのお客様だそうです。実際にここで作品作りの手ほどきを受け、その作家の作品を購入した人も多くおり、山川さんは「来てくれた海外の方に『私の"my職人"は富山県南砺市にいるのよ』と言ってもらえれば、世界が広がるのではないかと思います」と、これからの目標を語りました。
福井県鯖江市に移り住んだデザイナー・職人などで構成されるクリエイティブカンパニーTSUGIは、"支える・作る・売る"を軸に、グラフィックデザインをはじめ、商品開発、販路開拓までを一貫して行っています。
TSUGIは、日本のメガネフレーム生産90パーセント以上のシェアを誇るこの場所で、眼鏡の素材に新たな価値を見出したアクセサリーブランドSurをはじめとした、名産品に関わる様々な商品を生み出したり、他店舗が展開する商品のパッケージデザインなどを担当しています。会場では、思わず使ってみたくなるような、ワクワクが詰まった商品がたくさん並んでいました。
紹介してきたような作品のほかにも、持続的な生産活動を支える流通プラットフォームシステムの提案など、物だけにとらわれないデザインの数々が展示してありました。
また、初日に行われたオープニングカンファレンスでは、地域とデザインとの関係に関心のある人が集まって、情報や意見交換が行われました。まさにその場で、本展のテーマの一つでもある「つなぐ」が実現される「地域×デザイン 2018 -まちとまちをつなぐプロジェクト-」。この場所から、人へ、町へ、日本へと、どんどんとコミュニティの輪を広げていきませんか?
編集部 髙橋
information
東京ミッドタウン・デザインハブ 第71回企画展
地域×デザイン 2018 -まちとまちをつなぐプロジェクト-
会場:東京ミッドタウン・デザインハブ
会期:2018年2月23日(金)~3月11日(日)
開館時間:11:00~19:00
休館日:会期中無休
観覧料:無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.mpd.ac.jp/lds/2018/