現在、森アーツセンターギャラリーでは、「FINAL FANTASY 30th ANNIVERSARY EXHIBITION -別れの物語展-」が開催中です。本展は、時代や世代に関係なく、30年にわたり愛されてきたファイナルファンタジーの歴史を、"別れ"をテーマにふり返る大規模回顧展です。
なぜ"別れ"なのか。それは、出会いや絆、友情が生まれるところに、必ずいつか別れが訪れることに由来します。シリーズ内でも多くの別れの物語が綴られてきましたが、本展ではそれぞれの"別れ"を、様々な趣向を凝らした体験型展示によって回顧することにより、それまでの登場キャラクターの人生に思いを馳せることができます。
本展では、ファイナルファンタジーシリーズの生みの親である坂口博信さんが会見で「常に最先端の技術やハードウェアを取り入れて、技術的に深い所を追求していったからこそ今があります。とにかくチャレンジし続けるのがファイナルファンタジーなんです」と語っていた通り、最先端の技術を用いた展示が行われています。
受付で全員に渡されるのは、スマートフォンの専用音声ガイド機。会場に入る前にニックネーム、誰と展覧会に来たか、好きなファイナルファンタジーのタイトルという3つの情報を入力すると、回答によってガイド内容が変わり、その人に合った情報をもとに本展を楽しむことができます。
普通の音声ガイド機と大きく異なる点は、自分で操作する必要がないことです。本展では、このために新しく開発された「音声ARシステム」を導入し、会場内に約150個のBeaconという発信機を設置することにより、来場者は展示物の前に立つだけで、それぞれの展示とシンクロしたゲーム音楽やキャラクターボイス、詳しい作品情報を自
驚くのはそれだけではありません。実はこのスマートフォンは、音声ガイド以外の機能も果たしているのです。本展の見どころである「参加型インタラクティブシアター」では、このスマートフォンを使ってアトラクションに参加します。
高さ3.9メートル×幅12メートルの巨大壁面に投影された、飛空艇エンタープライズ号に乗り込み、ファイナルファンタジーの世界へと旅立つこのアトラクション。そこへ襲い掛かるのが、ファイナルファンタジーでもおなじみの幻獣バハムートです。スマートフォンに現れる連打ボタンをタップしてエネルギーを集め、仲間と共に強敵を打ち破ります。
ここでは、一人で来た人もそうでない人も、氷・炎・雷属性の3チームに分かれ、同じ属性の人と一緒に戦います。強敵を倒した達成感や一体感を味わったのも束の間、アトラクションが終わった後には、その仲間とは別れ、元の通り個別に展示品を見て回ります。"別れ"を見せるだけではなく体験させるのは、本展ならではの大きな特徴です。
FFXVエリアでは、クリエイターがどのように作品を作り上げていったのか、その片鱗を見ることができます。こちらは、ワールドマップのアイディアボード。どの地域にどんなものがあるのか以外にも、そこにどんな動物が生息しているのか、風の動き、気候などの詳しい情報が事細かに書き込まれています。ボードの周囲にはそれに伴うイメージ写真も並び、一つの場面を作るのにどれほどの労力がかかるのかを感じ取ることができます。
召喚獣や幻獣が登場するファイナルファンタジーの世界ですが、その一体を作るために、実在するありとあらゆる動物が調べつくされたそうです。実際にゲームをしてみると分かりますが、ファイナルファンタジーに出てくる動物やモンスターは、本当に存在しているかのように滑らかな動きを見せてくれます。それは、このようにCGや模型などで骨格や肉付きを一から作っているからだったのですね。
ファイナルファンタジーの"別れ"といえば、ファイナルファンタジーVIIのエアリスを思い出す方が多いのではないでしょうか? ゲーム本編で突然の悲劇的な別れを迎えたエアリス。VIIは従来のドット絵ではなく、シリーズ初の3DCGを用いたゲームであり、そのリアルな表現も相まって、多くのファンが彼女との別れを心から嘆き悲しみました。
このFF VIIエリアでは、別れの言葉もなく最期を迎えたエアリスと、主人公クラウドが出会った思い出の場所であるスラムの教会が再現されています。この教会に足を踏み入れると、今回のためだけに収録されたエアリスの思い出(モノローグ)が音声ガイドから流れてきます。ファイナルファンタジーVIIをプレイした人なら、思わず涙ぐんでしまうことでしょう。
歴代タイトルのイラストやキービジュアルなどを手掛けてきた天野喜孝さんによる「BIG BANG-誕生-」は、ファイナルファンタジーXVのために描いた大型作品「BIG BANG」を別のアプローチから描いたもの。ファイナルファンタジーのあらゆるエッセンスを、アルミ製のキャンバスに特殊なアクリル絵具で描き込み、コーティングを施してあります。大胆な構成でありながら、繊細な色使いで描かれたこの作品に、多くの人が足を止め、写真を撮っていました。
1987年に発売されて以降、長い歴史の中で多くの人に感動をもたらしてきたファイナルファンタジー。天野さんは本展に寄せて、「ファイナルファンタジーは終わったわけじゃなく、これからも続いていくシリーズです」とコメント。坂口さんも笑顔で「我々はいないかもしれませんが、これから先100周年を迎えることができれば」と、まだ見ぬファイナルファンタジーに思いを馳せていました。
"出会い"ではなく"別れ"を目の当たりにすることにより、人との出会いや、それからの時間の大切さを思い起こさせてくれる本展。"別れ"は寂しく悲しいものですが、同時にそれを乗り越えて進んでいく強さを与えてくれるものなのではないでしょうか。
編集部 髙橋
information
FINAL FANTASY 30th ANNIVERSARY EXHIBITION -別れの物語展-
会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)
会期:2018年1月22日(月)~2月28日(水)
開館時間:10:00~20:00(最終入館19:00)
休館日:会期中無休
入館料:一般・大学生2,500円、中学・高校生1,800円、ペア(年齢区分なし・2名分)4,000円、小学生以下無料(ただし18歳以上の同伴【有料】が必要)
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://www.finalfantasy.jp/30th/exhibition/