現在、21_21 DESIGN SIGHTのギャラリー3では、フィンランドの独立100周年を祝うポップアップイベント「FIN/100」が開催中です。会場では、誰もが自由にフィンランドのデザインを購入できるほか、アートや文学、食、ファッション、教育といった各分野で活躍する著名人を招いてのワークショップやトークイベントも行われ、フィンランドの歴史や文化、価値観などを自分の経験を通して知ることができます。
オープン初日でありフィンランドの独立記念日である12月6日(水)には駐日フィンランド大使であるユッカ・シウコサーリさんも駆けつけ、「フィンランドの独立100周年を祝う特別な日に、ここにいられることを嬉しく思います」と笑顔で挨拶をしました。
シウコサーリさんは棚に並んだデザインを見回して、日本とフィンランドには共通する美学があると述べ、「どちらの国も、純粋さや、自然との近さを大事にしています。日本の色々なところを歩いていると、この美学がどんなところからもたらされているのかを体感できます」と続けました。
館内に足を踏み入れると、すぐ目に飛び込んでくるのが今回のために特別に室内に建築されたログハウス。ログハウスといえば、北欧の厳しい気候の中で生まれた住居で、フィンランドでは現在でも寒さから人々を守っています。中に入るとたちまち広がる木のいい香り。この中で、トークイベントやワークショップが行われる予定とのこと。
空間ディレクターを務めた熊野亘さんは、本展の構成について「ショップは今回参加いただいた各ブランドの商品を一つ一つのストーリーと見立て、ライブラリーをイメージして構成しました。ログハウスはフィンランドのアイコンともいえるものなので、Honka Japanさんのご協力でワークショップスペースとして建てさせていただきました。また、ログハウスの後ろにはグレーのステップは、フィンランドでの思い出の中にある、石の丘をイメージしたもので、フィンランドの方々はそこでピクニックをしたり、語り合ったりするんです。今回そこでは、レクチャーなどを行うつもりです」と説明しました。
ステップがあるログハウスの後ろ側の頭上には、アーティストのラウラ・ヴァイノラさんによるフラワーアートが吊るされています。カスミソウによって作られた同作は、まるで空に浮かぶ雲のようです。ヴァイノラさんは、「私は実在しない花屋というコンセプトで"フローラ アンド ラウラ"を主催しています。今回FIN/100のために、このフラワーアートを作らせてもらいました。このほかにも、花にまつわる色々なサービスを提供していて、クリエイティブディレクターとデザイナーの役職を担っています」と挨拶しました。
ポップアップショップでは、主催であるインテリアブランドのアルテック(Vitra株式会社)をはじめとした8ブランドの商品が並んでおり、実際に手に取ることができます。商品はブランドごとに分けられているのではなく、実際に使う際のストーリーが浮かんでくるようなポジションに配置されています。
イメージを膨らませるために、お皿やコップなどの食器が揃ったフィンランドブランドづくしのダイニングテーブルも展示されています。真ん中にあるアルテックの植木鉢「リーヒティエ プラント ポット」は、1937年のパリ万博で展示され注目を集めたアイノ・アアルトのデザインをそのままに、素材をセラミック製に変えたもの。当時は製品化に至りませんでしたが、この2017年に満を持して発売されました。カラーは、フィンランドの国旗にも使われているブルーとホワイトの2色です。
色鮮やかな「AURORA Jewellery purse」や、普段使いにぴったりの「VENLA All -in-one pouch」を販売しているルミは、フィンランド語で「雪」を意味するレザーバッグブランド。現在は世界25カ国以上で商品が取り扱われている、世界を股に掛けるブランドの一つです。完璧に整っていながら、一つとして同じ形のない雪の結晶を象徴に、いつまでも色褪せることなく、使い続けるほどに愛着が増していくレザーアイテムのデザインに力を注いでいます。実際に手に取ってみると、しっとりと肌になじむような、なめらかな素材が使われていることが分かりました。
ヘルシンキを拠点とするブランド、カンパニーの「Sea Matryoshka」は、海の生態系がマトリョーシカで表現されています。おもちゃとして遊ぶのはもちろんのこと、動物たちの表情の面白さからインテリアとして飾るのもいいですね。
カンパニーは、フィンランド人ヨハン・オリンと韓国人アーム・ソンが2000年に設立したユニットで、デザイナー、アーティスト、プロデューサーとしてヘルシンキを拠点に活躍しています。2010年には、国内のデザインの分野で最も栄誉あるフィンランド国家デザイン賞を受賞しており、伝統的な工場や、国内外のアーティストと共に作られた作品にはどれも、彼らのものづくりへの純粋な思いが込められています。
主催であるアルテックの社長マリアンネ・ゴーブルさんは、今回のポップアップイベントについてこう語っています。「多くのデザインは、フィンランドの100年の歴史やモダニズムの哲学を受け継ぎ、誰もが暮しのなかで使うことができます。この20日間に訪れる人は、特別なショッピングの経験ができることと思います。また、ワークショップやイベントなどでフィンランドにまつわる大小さまざまな100個のできごとを企画しています。日によって全く別のできごとが起こります。ですから、1度だけでなく、何度も足を運んでくださいね」
日本ではムーミンやサンタの住む国として知られているフィンランドですが、フィンランドの風土や文化などに合わせたデザインを見て、新しい気づきがあるかもしれません。日本とも親交の深いフィンランドの100周年を、一緒にお祝いしませんか?「Hyvää itsenäisyyspäivää !(独立記念日に交わされる、フィンランドのお祝いの言葉)」
編集部 髙橋
information
「FIN/100」
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3
会期:2017年12月6日(水)~12月25日(月)
開館時間:10:00~19:00
休館日:会期中無休
入場料:無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
www.fin100.jp