現在、サントリー美術館(東京・六本木/館長 鳥井信吾)では、「六本木開館10周年記念展 天下を治めた絵師 狩野元信」が開催されています。狩野元信を単独で扱う本格的な回顧展というのは今回が初めてとのこと。
狩野元信(1477?-1559)は、室町時代より長きにわたり画壇の中心を担ってきた絵師集団である、「狩野派」の二代目です。絵師としてはもちろん、工房の主宰者としても優れた能力を発揮し、日本絵画史上最大画派の礎を築いたとされています。
サントリー美術館学芸員の念願だった本展覧会は、サントリー美術館が収蔵する元信の代表作「酒伝童子絵巻」が重要文化財に指定(2015年)されたことを機に、開催に至りました。展覧会では元信自身が手がけた作品と工房作をあわせて代表作を中心に約50件のほか、父・正信や中国絵画の名品もあわせて約90件の作品が紹介され、室町時代から幕末までの約400年という日本絵画史最大の画派の礎を築き上げた、元信の時代に触れることができます。
展覧会のポスターの画は、狩野元信の代表作の一つである「重要文化財 四季花鳥図」。繊細な筆遣いの中に見える、雄大な自然が象徴的な作品が目印です。
重要文化財 瀟湘八景図
狩野元信筆 四幅
室町時代 16世紀 京都・東海庵
【展示期間:10/4~10/16】
「近年は、狩野派の中でも桃山時代に活躍した永徳(元信の孫)や江戸時代の探幽(永徳の孫)の作品が注目されがちですが、その礎をつくった元信こそ、再評価されるべき人物だと思います。」そう語るのは、この展覧会を企画した池田芙美学芸員。
「元信自身の真筆作品は少なく、開催できるのか不安でしたが、おかげさまで代表作のほとんどを揃えることができました。」
狩野派の台頭を支えた大きな要因のひとつに、「画体」の確立があります。元信の父であり、狩野派の始祖とされる正信は、中国絵画の名作に倣う卓越した筆致を習得していましたが、元信はそれらの様式を整理・発展させ、真・行・草と言われる三種の「画体」を生み出します。そして、その「型」を弟子たちに学ばせることで、彼らが元信の手足となって動くことができるようになり、襖や屛風などの質の高い大画面の作品を完成させました。重要文化財「四季花鳥図」は元信の代表作の一つであり、集団制作の集大成とも言える障壁画です。
京都市指定有形文化財 月次風俗図扇面流し屛風
「元信」印 六曲一隻
室町時代 16世紀 京都・光圓寺
【展示期間:10/11~11/5】
さらに元信は、漢画系を絵師とする狩野派の枠に収まらず、様々な分野に挑戦していきます。濃彩の絵巻や、金屛風の伝統を引き継ぐ金碧画や、形状・技法の導入に加えて、風俗画や歌仙絵などやまと絵の画題など。和漢の両分野で力を発揮し、弟子とともに集団で制作にあたりました。それにより、大小さまざまな注文に素早く対応することができるようになり、元信工房は多くのパトロンを獲得したとされています。
この展覧会では、元信の代表作を中心に、その幅広い画業を6章に分けて紹介。元信が築き上げた狩野派の原点を味わえる展覧会となっています。
重要文化財 神馬図額
狩野元信筆 二面
室町時代 16世紀 兵庫・賀茂神社
画像提供:東京国立博物館 Image:TNM Image Archives
【展示期間:10/4~10/16】
"狩野氏終に元信を得るに至りて、天下画工の長となる"。日本絵画史の基礎資料とされる画人伝「本朝画伝」(1691年/狩野永納撰)に記されたその言葉こそ、"天下を治めた絵師 狩野元信"の偉大さを歴史的に証明しています。 「父の正信や孫の永徳には国宝作品がありますが、元信には国宝作品がありません。まだまだ再評価が必要です」と話す池田学芸員。 工房経営者としての姿もさることながら、絵師としての卓越した元信の才覚を感じてみてはいかがでしょうか。
※出品作品は期間中に展示替えがあります。
※写真の無断転載禁止
information
「六本木開館10周年記念展 天下を治めた絵師 狩野元信」
会場:サントリー美術館
会期:2017年9月16日(土)~11月5日(日)
時間:10:00~18:00
※金・土、および10月8日(日)、11月2日(木)は20時まで開館
※9月30日(土)は「六本木アートナイト2017」のため22時まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
※shop×cafeは会期中無休
休館:火曜日(ただし10月31日は開館)
入場料:一般1,300円、大学・高校生1,000円、中学生以下無料
※9月30日(土)は「六本木アートナイト2017」のため一般、
大学・高校生一律500円
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2017_5/