例年よりも早く暑さがやわらぎ、秋の訪れを感じる今日このごろ。東京ミッドタウンアトリウムで、時代ごとの名作キャッチコピーを展示する「コピージアム2017」が1週間にわたって開催されました。
集められたのは、誰もが一度は目や耳にしたことのあるキャッチコピーの数々。時代の気分を鋭く突いた言葉は、商品の魅力を伝えるだけにとどまらず、文化そのものをつくり出してきたと言っても過言ではありません。
この展示は、宣伝会議社の運営するコピーライター養成講座の開講60周年記念として実施されました。60年前というと、戦後すぐのタイミング。今でも人気の職種ですが、そんなに前からコピーライターを目指す人たちがいて、養成講座が成り立っていたことに驚かされます。
会場にはキャッチコピーだけが書かれたパネルがずらり。シンプルな見せ方だからこそ、言葉の強さが際立ちます。文字だけなのに、不思議とCMやポスターのビジュアルや、ナレーションの声が思い出されます。
一部のコピーは、実際に使われた広告ビジュアルがそのままの状態で展示されています。写真の「男は黙ってサッポロビール(秋山晶、サッポロビール)」のほか、TVドラマのタイトルにもなった「恋を何年休んでますか?(眞木準、伊勢丹)」、現役のトップコピーライター10名が名作コピーを順位付けした書籍『日本のベストコピー500』で見事1位に選出された「おいしい生活(糸井重里、西武百貨店)」など、レジェンドコピーの発表当時の姿が見られます。
そのほか、気になったコピーをいくつかご紹介します。
1968年、高度経済成長期のチョコレート菓子のコピー「大きいことはいいことだ(山本直純、森永)」からは、大量消費時代のシンプルなエネルギーを感じます。
カメラのコピー「ただ一度のものが、僕は好きだ。(秋山晶、キャノン)」は、瞬間を切り取るという写真のおもしろさが文学的な言い回しで表現されていて、なんとも言えない余韻が残ります。
女性向けの商品(美容家電)であるにもかかわらず、男性にも響くコピーとクリエイティブで話題になった「きれいなおねえさんは、好きですか。(一倉宏、パナソニック)」。
2000年代のコピーも負けてはいません。ほんの短い言葉の中に込められた、熱い想いが痛いほど伝わるカロリーメイトのコピー「とどけ、熱量。(福部明浩、大塚製薬)」。
食品を扱う会社としての責任感と誇りを感じさせる「やがて、いのちに変わるもの。(岩崎俊一、ミツカン)」
コピーは少し先の未来を映す鏡でもあります。沈んだ時代を打ち消すような明るいコピー、自由恋愛の幕開け時代にふさわしい色気のあるコピー、情報過多の時代に生まれたシンプルで力強いコピー。コピーが生まれた時代に、世の中ではどんなことが起きていたのかを比べながら見てみると、言葉の意味がより深く感じ取れるような気がします。
雑誌「宣伝会議」の60年代発売号の表紙も一部展示されています。右の1966年147号の表紙イラストは横尾忠則さんが担当。彼らしい極彩色の色使いが目をひきます。
さまざまな職種のプロフェッショナルのスキルを集めてつくられる広告クリエイティブ。業界外の人にとっては職種ごとの役割の違いが分かりづらいかもしれません。会場にはコピーライターやクリエイティブディレクターなどの職種の定義の説明も。コピーライターは「伝えたいことを伝わる言葉に磨き上げる仕事」だと説明されていました。
コピーライターを目指す方に向けて、養成講座の講師陣からのメッセージも。仲畑貴志さん、一倉宏さん、谷山雅計さん、中村禎さんなど、第一線で活躍するコピーライターのコピーを書く上での心構えや、自身がコピーライターを目指す立場だったころのエピソードが並びました。
この60年間、広告を彩ってきた言葉たち。業界に興味のある方も、イチ消費者として広告に触れている方も、それぞれの目線で楽しめる展示でした。
編集部T
information
「宣伝会議コピーライター養成講座60周年「コピージアム2017」」
会場:東京ミッドタウン アトリウム
会期:8月28日(月)~9月3日(日)※イベントは終了しました
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):https://copy.sendenkaigi.com/60th/event.html