六本木エリアのギャラリーを編集部スタッフの目線で紹介する「六本木ギャラリー探訪」。今回は六本木のAXISビル2階にスペースを構える「タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム」を訪ねました。
タカ・イシイギャラリーは六本木に2箇所、ニューヨークに1箇所のギャラリースペースを展開しています。ここ「タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム」は、写真ギャラリーとしての活動をより充実させるべく2013年にオープンしました。
お話をお伺いしたのは、スタッフの岡村さん。フランス・パリに留学していた学生時代に、当時パリで開廊していたタカ・イシイギャラリーでインターンとして働いたご縁で、帰国後も引き続きこのギャラリーで勤めているそう。
まずは写真と映像に特化したギャラリーをオープンした経緯から。 「1994年に最初のギャラリーをオープンした時から写真には積極的に取り組んできました。オーナーの石井が初めて開いた展覧会もラリー・クラークの個展なんです。写真を扱うギャラリーの数がまだまだ多くないこともあり、写真や映像作品を"アート"として積極的に発信するギャラリーをつくりたいという想いから、ここをオープンしました。」
こちらでは現代の国内外の作家のほか、日本の戦前・戦後世代の著名な作家の作品も紹介しているそう。「ギャラリストの石井は、作り込んだ写真よりも、率直に訴えかけてくるものや、自分自身の考えや感情を消化して作品に反映しているものに写真の面白さがあるとよく言っていて、そうした作品を中心に扱っています。」
現在開催されているのは、濱谷浩さんの写真展「怒りと悲しみの記録」。1960年の日米安保闘争の様子をおさめた22作品が展示されています。主に日本の民俗文化や風土を撮影してきた濱谷さんとしては、こうした政治的な取材は珍しいとのこと。
岡村さんが特に気に入っているという作品を幾つか紹介してもらいました。まずは、本展覧会の最後を飾る一枚。
「当時の騒乱や被害の中で、連帯し前へ進んでいこうという強い精神性が見える、象徴的な作品です。」
「通常のドキュメント写真とは一線を画していて、惹きつけられるんです。」と紹介してくれたのはこちら。濱谷さん自身の視点・解釈を含んだ写真は、ニュースを伝えるための説明的な報道写真とは異なり、そこにある"空気"や"人々の感情"まで捉えているように見えます。
展示されている作品を買うことができるのもギャラリーの醍醐味。「若い作家の作品であれば、買うことでそのアーティストを応援していくような意味合いや楽しさがあると思いますし、ベテランの作家であれば、重要な作品を日本に残していくという大切な意味を持つと思います。私たちも、もっと気軽に足を運んで頂ける工夫をしていきたいですね。」と、アート作品を購入することの意義や楽しみについて話してくれました。
最後に「デザイン&アートの街」としての六本木について聞いてみました。
「六本木は、美術館やギャラリーが同じエリアに点在していて効率的に回れますし、アート系のイベントも多く、文化的に感度の高い方が集まっている印象があります。でも海外、例えばパリと比べると、まだアートへの敷居が高くて、日常生活との距離もあると感じます。文化的に洗練された部分と、六本木が育んできた活発で陽気な雰囲気などの要素が混じり合うことで、アートがもっと身近になるんじゃないでしょうか。」
生活の中にアートが根付いていく余地があるとお話ししてくれた岡村さん。
「タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム」のあるAXISビルには、インテリアや雑貨を置くお店も沢山入っていますので、ぜひ肩肘を張らずに、あなたの生活に寄り添う作品を探しに行ってみてはいかがでしょうか?
information
「タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム」
住所:東京都港区六本木5-17-1 AXISビル 2F
TEL:03-5575-5004
営業時間:11:00〜19:00
休廊日:日曜、月曜、祝祭日
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):http://www.takaishiigallery.com/jp/