現在、東京ミッドタウンにある、FUJIFILM SQUARE 写真歴史博物館では、企画写真展「INTERFACE -写真家・東松照明を見る-」が開催されています。東松照明は戦後日本を代表する写真家の一人で、国内外を問わず写真界に大きな影響を与えてきました。
東松は60年代末から長崎や沖縄を撮影し、社会的なテーマに焦点を当ててきましたが、1986年に心臓バイパス手術を受けたことをきっかけに生命力に関心を持つようになりました。今回展示されている作品は1986年以降のもので、手術前の東松とは異なる視点が映し出されています。
展示は二部構成で、現在開催されている第一部「プラスチックス」(1988-1989年)は、海岸に漂着したプラスチックの残骸を被写体にしています。 初めて東松の作品に触れる人にとっては、つかみどころがなく難解に思えるかもしれませんが、合わせて展示されている彼の過去の作品や活動をまとめた年表に目を通すと、理解がしやすくなります。
「プラスチックス」1988-1989 年 © Shomei Tomatsu -INTERFACE
「プラスチックス」シリーズは、手術中に「黄泉平坂(よもつひらさか)でかいま見た、来世の風景」から着想を得たもので、手術後に療養のため移住した千葉の九十九里浜で撮影されたものです。療養中に出会ったもの、自分の目で見たものを形あるものとして残すことは、彼にとっては大きな意味のあることだったのかもしれません。
展覧会名の「インターフェイス」は二つの領域が接している境界を意味します。沖縄の米軍基地での撮影では「基地と沖縄」の境界を、そして自身の手術の経験を通して「生と死」の境界を見た東松。そんな彼が、「陸と海」の境界である海岸を写したことは、必然だったのでしょう。
被写体のプラスチックは、作られた当初の色と形が残っているもの、かろうじて原型をとどめているもの、バラバラになって散乱しているものなど、様々な形ながらどれも存在感を放っています。波にもまれてもなお、砂浜と同化することのないプラスチックは、自然と人工の揺るぎない境界を描いているようです。
会場に置かれていた東松の他の作品集や関連書籍を手にとってみると、このシリーズとは全く異なる手法で撮られている写真が多く掲載されていて、彼の幅広い表現力をうかがい知ることができます。
国内外の展覧会で何度も取りあげられてきた東松照明ですが、「プラスチックス」「インターフェイス」は、国内ではこれまでまとまった形で発表されることがあまりなかったシリーズだそうです。この貴重な機会にぜひ、足を運んでみては。
information
INTERFACE 写真家・東松照明を見る
第1部 「プラスチックス」シリーズより
第2部 「インターフェイス」シリーズより
会場:FUJIFILM SQUARE 写真歴史博物館
会期:第1部 2017 年 7 月 1 日(土)〜8 月 14 日(月)
第2部 2017 年 8 月 15 日(火)〜9 月 30 日(土)
時間:10:00 〜19:00 (入館は18:50まで)
休館日:会期中無休
入場料 : 無料
主 催 : 富士フイルム株式会社
協 力 : 東松照明オフィス INTERFACE
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://fujifilmsquare.jp/
写真展併催イベント:ギャラリートーク
東松康子氏(東松照明オフィスINTERFACE代表)が東松照明の素顔と作品制作について語ります。
第1部 7月29日(土) 14:00/16:00 ※終了しました
第2部 9月2日(土)14:00/16:00
各回ともに30分予定。参加無料、予約不要。座席用意なし。