今年、オープンから10週年を迎えた東京ミッドタウン・デザインハブ。その記念企画として「東京デザインテン」が4月14日(金)から5月21日(日)まで開催されています。この企画展、デザインの事例紹介というよりも、デザインを考えるための「視点」を提示するというもの。今後10年間の東京のデザインを考えるための、そのユニークな内容をご紹介します。
本展で取り上げているのは、「コウツウ」「サイカイハツ」「ウンソウ」「デンキ」「タワマン」「イチバ」「インサツ」「カンコウ」「リノベ」「タコクセキ」の10の"点"。タイトルの「テン」は、ダブルミーニングになっているというわけです。ディレクターの浅子佳英さんは、開催にあたりこう書いています。
「一見デザインには無縁で、互いに何の脈絡もないように見えるこれらの点は、私たちの生活を支え、さらにどこかで関連し、つながっています。(中略)新たな点をつなぎ、次の時代を描くための想像力を働かせてみてください」
最初の"点"は「コウツウ」。羽田・成田と都心を結ぶプロジェクトや、都心や臨海副都心へ向かうルートの整備など、ここには「2030年までに作るべき鉄道24路線答申書」が掲示されていました。人の動きを決定づける交通ネットワーク自体が東京の姿を変えていく......のかもしれません。
「ウンソウ」も近年話題です。ネット通販はもはや私たちの生活に欠かせないレベルにまで浸透、宅配便業者は増え続ける荷物をどう捌いていくのかが問われています。ドローンを利用した配達も一部で実現、その実機も展示されていました。
個人的に興味を引かれたのは「イチバ」。ここでは現在に至る市場の歴史が書かれているのですが、実は発祥は江戸時代、日本橋付近。19世紀末にはやはり移転問題が起こり、最終的に関東大震災が起こったことで、半ば偶発的に築地に移転したのだそう。暮らしに欠かせない機能だけに、昔も今も、移転は一筋縄ではいかないようです。
意外だったのは、「インサツ」が取り上げられていたこと。他のトピックとはちょっとレベル感が異なるような印象を受けたのですが、実は東京都内の製造業の中で、もっとも事業所数が多いのが印刷業(2011年時点)。いわば、東京を代表する地場産業なのだそう。
こちらでは、デジタルにはない味わいやアナログならではの面白さを若手が見出し、世代を超えて技術が継承されている例として「活版印刷」が展示されていました。
そのほか、東日本大震災以来の課題となっている「デンキ」、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて取り組みが盛んな「カンコウ」、少子高齢化が進む中での不動産の価値をめぐる「タワマン」や「リノベ」など、まさに今の東京におけるホットなトピックがずらり。
そして、実は一ヶ所、「カンコウ」にまつわる隠された展示があります。こちらでは映像を放映、やはりこれからの東京を考えるために示唆に富んだ内容でした(どんな映像かは、ぜひ会場でご確認を)。
本展は、これからの東京をデザインしていくための課題を見つけるためのもの。でも、デザイナーだけでなく、どんな職業の人でも考えさせられるヒントに満ちています。気になる"点"を見つけたら、きっとそこから新しい東京を発見できるはず。
ちなみに、展示で紹介しているエリアを巡る「東京デザインツアー」も随時開催されています(詳細はこちらのサイトで。クリックすると外部サイトに移動します)。こちらもぜひご参加を。
http://peatix.com/group/8504
編集部 飯塚
information
東京ミッドタウン・デザインハブ 10周年記念 第65回企画展「東京デザインテン」
会場:東京ミッドタウン・デザインハブ
会期:4月14日(金)~5月21日(日)
時間:11:00~19:00
入場料:無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://designhub.jp/exhibitions/2918/