世界三大美術館のひとつ、ロシアのエルミタージュ美術館。250年以上の歳月をかけて蒐集された300万点以上の収蔵品のうち、厳選した油彩画85点を、今、六本木で観ることができます。16〜18世紀のヨーロッパの巨匠"オールドマスター"たちが描いた名画を堪能できる展覧会「大エルミタージュ美術館展」の様子をご紹介。
「エルミタージュ」がフランス語で「隠れ家」を意味するとおり、美術館の起源は、女帝・エカテリーナ2世がコレクションを愛でるため、1775年につくった自分専用の展示室とのこと。展示は、そのエカテリーナ2世の肖像画からスタート。知性と教養に優れ、ロシアの文化・教育の整備に力を注いだ人物だったようです。
展示作品はすべてエルミタージュ美術館の常設展示作品。いわば美術館の"顔"ともいえる名画の数々が、国・地域ごとに展示されていました。第1章は「イタリア:ルネサンスからバロックへ」。ルネサンスが起こった国・イタリアの当時の名画が、真っ赤な展示室にずらりと並びます。
イタリアといえばルネサンス、ルネサンスの画家といえばティツィアーノ。奔放な筆づかいと繊細な色使いで、若い女性の魅力を細やかに描き出した名作です。
第2章は「オランダ:市民絵画の黄金時代」。イタリアの赤から一転、グリーンの壁には、美術の教科書で見たことがある作品、フランス・ハンスの「手袋を持つ男の肖像」がありました。そして、バロック期を代表するこの巨匠の作品も。
レンブラントといえば、光と影を巧みに描く明暗法が有名。描かれているのは、ペルシャ王クセルクセスの右腕だったハマンが、王の不興を買って極刑を科されるというドラマティックなシーン。
第3章「フランドル:バロック的豊穣の時代」には、17世紀に圧倒的な影響力を誇ったルーベンスの絵が。大規模な工房を構え、多彩なジャンルの絵画作品を残しています。こちらはフランドルの農村地帯の羊飼いと村娘を描いた作品です。
続いて、第4章「スペイン:神と聖人の世紀」へ。政治・経済的に衰退しつつあった17世紀のスペインでは人々をカトリック信仰に導く宗教画が多く描かれました。壁の美しい青色からも、どことなく禁欲的で敬虔な雰囲気が感じられます。
第5章「フランス:古典主義的バロックからロココへ」は、解説に「フランスの輝ける時代を彩る画家たちの作品をご覧ください」とあるように、壁の色がなんとゴールド。繊細で優美なロココ様式を生んだ国らしい色です。
そのロココ絵画の創始者・ヴァトーの作品がこちら。上流階級の紳士淑女の恋を描く「雅宴画(フェート・ギャラント)」の画家としても知られ、この絵ではまさに恋の駆け引きのワンシーンが描かれています。
最後の第6章は「イギリス・ドイツ:美術大国の狭間で」。16〜17世紀、宗教改革に揺れたこの2国の名画のうち、絵も展示方法も目を引いたのが、このクラーナハの作品。
クラーナハは宗教画を数多く描いた作家で、特徴は独特の官能美。こちらの作品は聖母子像、美しく描かれたマリアの姿とビビッドな色彩が目を引きます。
これだけ網羅的に西洋絵画の名作に触れることができるのは、エルミタージュ美術館のコレクションだからこそ。最後には、エルミタージュ美術館を紹介する映像が流れ、世界最高峰の美術館を体感することもできます。
ちなみにミュージアムショップには、こちらもロシアの誇るチュブラーシカやマトリョーシカがたくさん。エルミタージュ美術館のような華麗な世界から、素朴で愛らしいチュブラーシカまで。この春、ぜひ六本木でロシアにどっぷり浸ってみては?
編集部 飯塚
information
「大エルミタージュ美術館展 オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち」
会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ 森タワー52階)
会期:3月18日(土)~6月18日(日)
休館:5月15日(月)
時間:10:00~20:00(5月2日を除き火曜日は17:00まで、入場は閉館の30分前まで)
入場料:一般1,600円、大学生1,300円、中高生800円