毎回、斬新な切り口の企画展を行なっている21_21 DESIGN SIGHT、現在はなんとスポーツ選手をテーマにした「アスリート展」を開催しています。アスリートをかたちづくるさまざまな側面をデザインの視点から紐解いていくという同展、どんな展示なのでしょうか? 2017年2月16日に行われたプレスプレビューの様子とともに、その内容をご紹介します。
展覧会のディレクターを務めたのは、男子400Mハードルの日本記録保持者の為末大さん(中)、Takramのデザインエンジニア・緒方壽人さん(右)、人間の知覚能力に基づく新しい表現を研究している菅俊一さん(左)。
「アスリートが体験している世界は日常の延長線上にあることに気づけるような展示」と為末さん。スポーツ用品メーカーなどさまざまな企業や機関、作家と恊働した、体験型の展示を中心とした構成になっています。
最初に出迎えるのは、アスリートの動きをモーションキャプチャーで抽出・可視化した映像「アスリートダイナミズム」。動きを表す線がうねうねと躍動、スクリーン手前の装置で視点を移動して観察することができます。
その先の展示室では、「驚異の部屋」と題した映像が。100M走や走り幅跳びなど、さまざまな競技の走る速度や飛ぶ高さなどを実寸大の人物シルエットで再現した映像を壁に投影、目の前でトップアスリートの動きを見ることができます。写真はフルマラソン(42.195km)を2時間2分57秒で駆け抜ける様子、そのスピードは私の全速力とほとんど同じで、まさに驚異的。
「驚異の部屋」でアスリートのすごさを目で見て感じたら、次は自分自身の身体を使って体感していきます。広い空間に並ぶのは、バランス感覚や力の調整などを理解するための体感型の展示の数々。
たとえば写真は、各競技の特徴的なポーズを真似ると、スクリーンに投影されたシルエットが実際の選手のシルエットに変化するというもの。アスリートの「体型」の特徴がわかります。
「戦術とビッグデータ」は、FIFAワールドカップの際、ドイツ代表が企業と共同開発したビッグデータを活用した分析システム。サッカーの試合中におけるさまざまな状況を可視化し、タッチパネルを使って戦術を体験することが可能。
そのほかの展示も多彩です。こちらは「Analogy Learning」という映像作品。コーチが選手を指導するとき、アナロジー=たとえを用いることが多いのだそうです。その「たとえ」のイメージ映像と実際の競技の様子を並べて見ることができます。アスリートって、こんなことを考えているんですね。
個人的に面白かったのが、groovisionsの作品「スポーツ新聞」。何か仕掛けがあるわけでなく、ひたすら各スポーツ新聞の膨大なバックナンバーが積まれているだけ。たしかにこれだけ人気があり注目を集めるのも、アスリートの特徴的な一面です。
本展のもうひとつの特徴は、グッズ販売も充実していること。たとえばこちらはホワイトレザーのおしゃれなスニーカー......なのですが、実は学校指定靴の名作「ジャガーシグマ」を大人用にリデザインしたもの。懐かしい! という人も多いのでは。
ちなみに、21_21 DESIGN SIGHTは今年3月で10周年。3月31日(金)には、旧カフェ棟を新たなスペース「ギャラリー3」として開設し、一般に開放するほか展示やイベント、ワークショップなどを行っていくそうです。その場所は現在改装中、どんなスペースになるのか、楽しみですね。
編集部 飯塚
information
「アスリート展」
会場:21_21 DESING SIGHT
会期:2月17日(金)~6月4日(日)
休館:火曜
時間:10:00~19:00(入館は18:30まで)
入場料:一般 1,100円、大学生 800円、高校生 500円、中学生以下無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://www.2121designsight.jp