日本の各地域で、産業の活性やコミュニティの再編に挑もうと、さまざまな取り組みが行われています。東京ミッドタウン・デザインハブで開催されている「地域×デザイン2017 -まちが魅えるプロジェクト-」では、デザインの力を活用して、地域の課題を解決し新たな魅力を引き出そうとするプロジェクトが展示とトークイベントにより多数紹介されています。その見どころをお伝えします。
会場では、全国から選定された10の地域プロジェクトの解説パネル、模型、実際に考案された製品などがずらりと展示されています。
奈良に拠点を置く麻織物メーカー、中川政七商店による「100年後の『工芸大国』を目指す、産地再生の取り組み」では、同社が経営コンサルティングを手掛けた長崎県波佐見町の陶磁器メーカー、マルヒロの経営再生の事例を紹介。人気陶磁器ブランド「HASAMI」を誕生させ、全国の窯元が一目置く存在にまでに成長させた過程を、実際の決算書なども公開して解説されていました。
こちらは有機農業が盛んな宮崎県・綾町で生産された野菜と果物。後ろのモニターにはプロモーション映像が流れています。綾町ではほかにも写真集やタブロイドなどを制作し、デザイン性に優れたプロモーション「aya100」を展開中。農業の衰退を食い止めるためにつくられた販促物からは、新しい農業のイメージが感じられました。
先日のクリエイターインタビューに登場したプロダクトデザイナー、清水久和さんが手掛けるプロジェクト「愛のバッドデザイン」の展示も。香川県の小豆島で行ったプロジェクトの様子が色鮮やかな写真をメインに紹介されていました。
「愛のバッドデザイン」のテーマである「賞はもらえないけれど、グッドでユーモラスな存在感を放つモノたち」を、島の小学生や若者が中心になって発掘し、パネルにして並べています。地元の人々の目線で切り取られた島の風景は、ひょっとすると観光名所よりも魅力的かもしれません。
クラウドファンディングで資金を調達し、長崎県五島市にある築80年の民家を改修してオープンした「さんごさん」は、島民や著名人から寄付された「人生の3冊」が並ぶ私設図書館。島民の憩いの場としては、また新たな観光スポットとして人気を集めているそう。会場ではその建物の模型や書棚の一部を展示。ちなみに、会期中、デザインハブの受付で「人生の3冊」を寄付すると「さんごさんステッカー」がもらえるそうです。
使用した塗料や加工技術などについても詳しく紹介されています。展示自体の見せ方がわかりやすく、どういった場所でどんな機能を持つのかがよくわかりました。
その他、単なる「地域おこし」にとどまらないユニークなプロジェクトばかり。また、展覧会期間中には、トークイベントやワークショップを開催し、第一線でプロジェクトに携わるゲストがさまざまな地域の取り組みを紹介しています。入場料、参加費とも無料。興味があるという方は気軽に訪れてみては。
編集部 五十嵐
information
「地域×デザイン2017 -まちが魅えるプロジェクト-」
会場:東京ミッドタウン・デザインハブ
会期:2月3日(金)~2月26日(日)
開館時間:11:00~19:00
入場料:無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://archive.jidp.or.jp/lds2017/