FUJIFILM SQUAREは、4つの写真ギャラリーなどがある富士フイルムの複合施設。連日、幅広いジャンルの作家の写真作品が展示されています。今回は、館内施設のひとつ「写真歴史博物館」で開催中の「入江泰吉 作品展 『心の原風景 奈良大和路』」をレポート。春日大社の「式年造替」で注目の奈良・大和路を撮影した作品は、まさに日本の"原風景"。新年にふさわしい展覧会の様子をどうぞ。
展示が行われている「写真歴史博物館」は、およそ170年を越える写真史を彩ったカメラや当時の写真、体験型展示などで写真の歴史が学べる施設。訪れたときは、富士フイルムOBの方による「見どころガイド」が行われていました(毎日15時30分から開催しているとのこと)。
写真展が行われていたのは、博物館の一角。壁面いっぱいに、大和路の風景を写した風景写真の数々が並びます(写真展は撮影不可)。今回展示されているのは、入江泰吉がモノクロからカラーに転向した1964年以降の作品。
こちらが代表作「斑鳩の里落陽(法隆寺塔)」。画面下に小さく法隆寺の五重塔が見えます。青・黄・赤と、鱗雲がグラデーションに染まっていく瞬間を捉えた美しい1枚です。
ちなみにこの作品、幕末から現代に至る、日本を代表する作家の記録的価値の高い作品を収蔵した「フジフイルム・フォトコレクション」にも選ばれています。
歴史的な文化財の写真も多数。入江泰吉は、戦後、故郷・奈良の文化財が米軍に接収されるとの噂を耳にし、せめて写真に残そうと決意して以来、奈良の仏像や風景、伝統行事の撮影に専念。"奈良大和路"のイメージを広く世間に浸透させました。
秋の畑に柿が実った様子を写したこちらは、まさに"日本の原風景"。収穫した大根が干されているところなど、なんとも不思議と懐かしさを感じさせます。
「大和路のどこに魅力があるのかと聞かれれば、それは自然と歴史と、歴史の中に生きた人々のドラマと答えるよりほかないであろう」。展示の間に挿入されている、作家本人の言葉も味わい深く、作品に彩りを添えていました。
そして、個人的にもっとも惹かれたのがこれ。親子3頭の鹿が一斉に振り向いてカメラ目線! こんなかわいすぎる写真、SNSにアップしたら、一体どれだけの「いいね」がつくのでしょうか......。
2月18日(土)には、本展を監修した入江泰吉記念奈良市写真美術館の技術員・兼古健悟さんによるギャラリートークも開催されるそうです。美しい風景写真を眺めながら、年のはじめに、あらためて「日本」に触れてみてはいかがでしょうか。
編集部 飯塚
information
「入江泰吉 作品展 『心の原風景 奈良大和路』」
会場:フジフイルムスクエア・写真歴史博物館
会期:2017年1月4日(水)~3月22日(木)
時間:10:00~19:00(入場は18:50まで)
休館日:なし
入場料:無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://fujifilmsquare.jp/detail/17010404.html