「DOMANI・明日展」とは、文化庁による「新進芸術家海外研修制度」で海外派遣された若手芸術家の成果発表の場として、毎年開催されている展覧会。その第19回が、2月5日(日)まで国立新美術館で開催中です。テーマは「reconsidering Japan」(日本を再考する)、2020年代のアートシーンを担う多彩な作家がラインナップされた展示の様子をどうぞ。
内覧会では、出展作家13名がごあいさつ。絵画、現代美術、メディアアート、インスタレーション、写真、陶芸、アニメーションと、素材も表現も多様な若手アーティストが国立新美術館に集結しました。展示のボリュームもたっぷり、ここでは個人的に印象に残った作品を中心にご紹介します。
まずは2002年にイギリスに派遣、現在もロンドンを拠点に活躍する岡田葉さんの作品。悲しい話や怖い夢、ホラー映画や不穏なものが絵を描くきっかけになっているそうで、「恐怖はユーモアに裏返すことが可能」とコメント。たしかに、日本の妖怪のような怖いけどちょっとかわいい世界観です。
こちらは一転して、バリバリのメディアアートを手がける南隆雄さん。2010年にフランスに派遣、地中海沿岸地域で記録した素材を6枚のヴィデオで再構成した作品「Medi」を中心に展示。南宋画や版画を参照して制作したとのこと。
松井えり菜さんはドイツに派遣され、現在は東京を拠点に、現代アートのジャンルで活動中。自画像にこだわって制作を続けているアーティストです。
こちらの作品は、「魂は循環する」という仏教の教えにインスピレーションを得て、奄美大島で出会ったマングースなど動物たちも登場する意欲作。
まるで「ピタゴラ装置」のような作品を制作したのは、2013年にオーストラリアに派遣、2015年にはプリ・アルスエレクトロニカに入選した三原聡一郎さん。顕微鏡や苔の入った箱、並べられた卵を押し出そうとする機械で構成された作品「空白のプロジェクト」は、想像力をかき立てます。
アメリカに派遣された曽谷朝絵さんは、内覧会時はライブドローイングの最中。絵画を構成するパーツを空間にちりばめたインスタレーションを展開していました。
個人的にもっとも興味を惹かれたのが、池内晶子さんの「Knotted Thread」という作品。パッと見ただけでは赤い何かがぼんやりと宙に浮かんでいるように見えるのですが......。
近寄って、よーく目を凝らしてみると、このとおり。非常に細い絹糸で緻密に構成された、とても繊細な作品でした。
展示のラストを飾るのは、展覧会のイメージヴィジュアルにもなっている金子富之さんの作品。派遣されたのはカンボジア、作品はバリ・ヒンドゥーの神様を描いたもの。
派遣中にさまざまな場所で描いたという大量のスケッチも圧巻。もともと日本画を専攻してきた金子さんがアジアの神様と出会い、新たなイメージが構築されていく様子が見て取れました。
そのほか、お気に入り作品を書く用紙が用意されていたり、出展作家のギャラリートーク(次回1月22日(日))や座談会(次回1月28日(土))が開催されたりと、イベントも盛りだくさん。新年を迎えた今、ぜひ未来を担うアーティストの作品に触れてみてください。
編集部 飯塚
information
「未来を担う美術家たち 19th DOMANI・明日展 文化庁新進芸術家海外研修制度の成果」
会場:国立新美術館
会期:2016年12月10日(土)~2017年2月5日(日)
開館時間:10:00~18:00
※毎週金土は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)
入場料:一般 1,000円、大学生 500円
※高校生、18 歳未満、障害者手帳をお持ちの方(付添の方1名含む)は無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://domani-ten.com