秋田藩士が中心に描いた阿蘭陀(おらんだ)風の絵画、秋田蘭画をご存じでしょうか? 江戸時代中期に、日本の伝統的な画材を使いながらも西洋画の手法を取り入れた、秋田藩の武士達が残した独特の画風の絵画です。秋田蘭画の名手であり、あの「解体新書」の挿絵を描いた小田野直武に焦点を当てた展覧会「世界に挑んだ7年 小田野直武と秋田蘭画」が、現在サントリー美術館で開催中。その見どころと、内覧会の模様をお伝えします。
1749年に秋田藩の角館に生まれた直武は、幼い頃から画才を発揮し、数え年17歳にして「大威徳明王像図」の制作を任されました(期間中は展示替えがあり、「大威徳明王像図」の展示は終了しています)。本展では、それら初期作品も含め、佐竹曙山や佐竹義躬など、直武とともに秋田蘭画を代表する絵師たちの作品も展示されています。
直武は、のちに秋田蘭画の理論的指導者となる平賀源内との出会いをきっかけに、日本初の西洋医学書の翻訳「解体新書」の挿絵を描くという大役を任されます。会場ではその貴重な翻訳書の一部を展示。歴史の教科書で見たあの挿絵を、思いがけず再び目にすることができました。
1732年に長崎に来航した中国人画家、沈南蘋。写実的な画風は南蘋派と呼ばれ、当時の画壇に広く影響を与えたそう(展示替えあり)。東洋絵画と並んで、秋田蘭画の源流とされている画風です。直武に技法を教えたとされる宋紫石らによる南蘋風絵画と、色鮮やかな東洋絵画もずらりと並びます。
直武が残した上野の不忍池を描いたこちらは、和洋折衷、東西の美を兼ね備えた秋田蘭画の魅力を物語る作品。朱色や黄色のはっきりとした色使いに目を奪われました(展示終了、現在はレプリカを展示)。
秋田蘭画の特徴のひとつ「遠近法」で富士山を描いた、直武による富嶽図。その美しさと非現実的な構図は、実際に目の前にすると、おとぎ話のワンシーンのようでもあり、メルヘンチックな印象を受けました。
花鳥山水の絵画が唐太宗の肖像画を囲んだ三幅対の作品「唐太宗・花鳥山水図」も見どころのひとつ。葉の模様などは実に写実的に描かれていて、見る者をはっとさせる迫力があります。
ミュージアムショップでは、全209ページと読みごたえ十分の展覧会の図録(税込2500円)や、展示作品をプリントしたポストカードも販売。誰もが知る「解体新書」の挿絵を手掛けた小田野直武。しかし、その名前を初めて聞いたという人も多いのではないのでしょうか。その才能と、彼が築いた秋田蘭画の世界を、ぜひその目で確かめてみてはいかがでしょうか。
編集部 五十嵐
information
「世界に挑んだ7年 小田野直武と秋田蘭画」
会場:サントリー美術館
会期:2017年1月9日(月・祝日)まで
開館時間:10:00~18:00
※毎週金、土曜日、12月22日(木)、1月8日(日)は20:00まで (入場は閉館の30分前まで)
※展示替えあり、1月3日(火)を除く火曜日、12月30日(金)〜1月1日(日・祝)は休刊
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://www.suntory.co.jp/sma/