現在開催中のこちらの展覧会、内容は「デザインの理念を基盤としたデザイン実践、実践を通して具現化するデザイン思想、批評や啓蒙活動へ拡張されたデザインを提示」するというもの。なんともアカデミックな表現は、武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科の50年に及ぶ教育活動の成果の発表の場だから。展示からは、時代とともにデザインの領域がぐんぐん広がっていく様子が見て取れました。その様子をお届けします。
まずは、基礎デザイン学科のこれまでの歩みから。開設された1967年以来、向井周太郎さんから原研哉さんへと教育理念のバトンが受け継がれ、深澤直人さんや柴田文江さんなど、第一線で活躍するクリエイターも教員として参加してきました。
こちらが会場の様子。1967年入学の1期卒業生から、今年入学した50期の在学生まで、各期の代表者それぞれの作品がキューブ状の什器に年代順に並べられています。
みんな大好き「チェルシー」やステラおばさんのクッキーのパッケージをデザインしたのは、7期の天羽博さん。代表を務める会社では、ファッションブランドも展開中。
27期の八重樫文さんは、大学教授。これまで、経営学などさまざまなフィールドで「デザイン」を浸透させようとしてきているそうです。
35期は金道泰幸さん、家業の4代目を継ぎ、現在はなんとホテルの経営者。現在は新たな仕組みを取り入れて実践していこうとしているとのこと。
こうして時系列で卒業生の活躍を眺めていて気づくのは、デザインの領域が、特に1990年代以降、ぐっと拡大していること。装丁あり、ロボットあり、映像や写真もあり......。50年分の「デザイン学」の成果を一気に見ることで、その潮流がよくわかる構成となっていました。
ちなみに、原研哉さんや柴田文江さん、菱川勢一さんの3名の作品も展示されています(写真は菱川さんの「srk」という作品)。菱川さんといえば「六本木未来恋愛映画祭」(12月15日(木)開催)の発案者。この企画も、少子化問題をデザインで解決することを目指した、これまでにないもの......といえるかもしれません。
デザインのこれまでの歩みとともに、これからの多様な可能性も感じさせてくれる本展、開催は12月25日(日)まで。興味のある方はぜひ訪れてみては。
編集部 飯塚
information
東京ミッドタウン・デザインハブ 第62回企画展「デザインの理念と形成:デザイン学の50年」
会場:東京ミッドタウン・デザインハブ
会期:2016年11月19日(土)〜12月25日(日)
開館時間:11:00~19:00
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://designhub.jp/exhibitions/2592/