オーストリア大公マリア=テレジアの15番目の子として生まれ、14歳でフランス王太子(のちのルイ16世)に嫁ぎフランス王妃となったマリー・アントワネット。そのドラマティックな生涯を、王妃やその家族を描いた絵画、愛用品、プライベート空間の再現など約200点の展示品から辿る展覧会が、森アーツセンターギャラリーで開催中。内覧会の様子とともに、見どころをご紹介します。
ヴェルサイユ宮殿が企画・監修するマリー・アントワネットに関する展覧会としては日本初となる本展では、オーストリアの首都・ウィーンに生まれ、37歳で処刑台に立つまでの人生を時系列で章ごとに紹介。数々の絵画にはじまり、愛用していた調度品や実際に身につけていた衣類など、貴重な資料が公開されています。写真は、マリア=テレジアのまわりにその子どもたちが集う肖像画や、成婚前の王妃を描いた絵画が並ぶ第1章の展示室の様子。ハプスブルグ家とブルボン家の家系図の解説もありました。
ヴェルサイユ宮殿でルイ16世との結婚式を挙げた夜、同じくヴェルサイユ宮殿の新オペラ劇場落成式が行われ、そのために王家用の巨大なテーブルも誂われました。写真は、その壮大な祝宴を再現した空間。中心には王立セーヴル磁器製作所が特別に製作したテーブル飾りが置かれています。この飾りを囲んで繰り広げられた宴は、一体どのようなものだったのか、しばし想像を膨らませます......。
即位したばかりのルイ16世と王妃マリー・アントワネットを描いた肖像画もありました。シンプルでありながらゴージャスなフレームにも目を奪われます。
その華やかな装いで、当時のファッションアイコンとしても注目を浴びていたマリー・アントワネット。贅を尽くしたドレスや装飾品のデザイン画も展示されていました。克明に描かれたレースやビジューなどのディテールは実に見事。
王妃の居室、浴室を原寸大で空間再現したプチ・アパルトマンも見どころのひとつ。写真は、ヴェルサイユ宮殿にあるものを忠実に再現した王妃の居室。消失してしまった図書館は、最新デジタル技術で再現されています。この場だけフランスにトリップしたかのような、精巧な出来映えです。
今回展示されている調度品コレクションの一部に、漆器や伊万里焼風の食器がありました(写真は12月16日まで展示。12月17日からは別の漆器類が展示されます)。マリー・アントワネットは日本の伝統工芸品を好んでいたそう。18世紀のフランス王室で、このような形で日本の文化が愛でられていたなんて意外ですね。
これまでの豪華絢爛なイメージからは一変。展示終盤に差し掛かると、王妃の最期を描いた絵画や、投獄されていた際に身につけていた肌着の実物が、暗闇にぼんやりと浮かび上がるかのように並びます。
こちらは、なんと彼女が処刑時に履いていたとされる靴。そんな想像を絶するようなものも、会場で実際に目にしました。
マリー・アントワネット一色に染まったミュージアムショップも見逃せません。ショップにはパリの老舗パティスリーメゾン「ラデュレ」の特設店が登場し、会場限定のローズ・アニス風味のオリジナルマカロンなどが販売されています。
ヴェルサイユ宮殿のみで取り扱いのあるオリジナルグッズも特別に販売。この機会にお見逃しなく。
「パンがなければ、お菓子を食べればいいじゃない」という言葉を残したと伝えられる、天真爛漫で浪費家という印象のフランス王妃、マリー・アントワネット。しかし本展は、彼女が抱えていた苦悩にも寄り添い、その人物像を掘り下げた内容になっていました。これまでのイメージを覆す、見応えのある展覧会です。
編集部 五十嵐
information
「ヴェルサイユ宮殿《監修》 マリー・アントワネット展 美術品が語るフランス王妃の真実」
会場:森アーツセンターギャラリー
会期:2017年2月26日(日)まで
開館時間:10:00~20:00
※毎週火曜日は17:00まで (入場は閉館の30分前まで)
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://www.ntv.co.jp/marie/