普段、何気なくお店で手にしたり食卓にのぼる、大量生産によって生み出された製品の数々。味や食感の決め手となる素材や、一目見てそれとわかるパッケージなどをデザインの視点で分析した「デザインの解剖展: 身近なものから世界を見る方法」が、現在、21_21 DESIGN SIGHTで開催中です。誰もが知っているあの商品を"解剖"した展覧会を、プレスプレビューの様子を交えてレポートします。
展覧会のディレクターを務めたのは、グラフィックデザイナーの佐藤 卓さん(写真左)。「デザインの解剖」は、佐藤さんが2001年より取り組んできたプロジェクト。本展ではこれまでの成果に加え、「きのこの山」や「明治ブルガリアヨーグルト」など5つの製品を新たに"解剖"して紹介しています。
佐藤さんは、「日常生活に馴染んでいるものを、デザインの視点で解剖しました。解剖的視点でものを見る目を少しでも養う手助けになれば」とコメント。プレスプレビューでは、企画制作協力したアートディレクター・岡崎智弘さん(写真右)とともに作品解説したほか、参加クリエイターによる作品紹介も行われました。
会場に入ってまず目にするのが、佐藤さんが説く「デザインの解剖とは、」。「①身近なものを ②デザインの視点で ③外側から内側に向かって ④細かく分析することで ⑤ものを通して世界を見る ⑥プロジェクトです」。簡潔明瞭です。
メインフロアに進むと、鎮座するきのこの山の拡大オブジェに遭遇!(1枚目の写真) ここからは、株式会社明治の5つの製品の"解剖"がスタート。それぞれの商品について、歴史、ネーミング、ロゴに採用されているフォントやイラスト、パッケージの形状など、300以上の項目で事細かに解説されていて、情報量は膨大。さらに、第一線で活躍するクリエイターが、映像やインスタレーションを用いてデザインの解剖に迫った作品も展示されています。以下、気になった箇所をピックアップしてご紹介します。
たとえばこちらは、「きのこの山」のパッケージから展開された風景のジオラマ。里山のイラストが立体になって浮かび上がったことにより、その世界を深く観察することができます。チョコでできたきのこも、どこかに生えていそう......。
ヨーグルトといえば「明治ブルガリアヨーグルト」という人も多いのでは? こちらはパッケージに記載されている情報をそれぞれ立体にして、デザインの構造が一目でわかるように表現したもの。こうやって見ると、かなりの情報量があるんですね。
映像ディレクターの細金卓也さんの作品「スプーンとヨーグルトの関係性」は、わかるようで言葉では表現しづらい、ヨーグルトの質感を映像に捉えてじっくりと観察しています。
製品パッケージに必ず印字されている賞味(消費)期限の表示の仕組みを、カタカタと音を立てながらわかりやすく表現したオートマタ作家、原田和明さんによる「ドット文字印字の仕組み」。工場では、同じ仕組みを搭載した機械が超高速で稼働しているそうです。
「明治エッセルスーパーカップ」に専用スプーンが存在しないことを知ったプロダクトデザイナーの鈴木啓太さんが、ぴったりのスプーンをデザイン。アイスクリームのイメージに合わせたゴールドカラー、たしかに食欲をそそります!
グラフィックデザイナーの下浜臨太郎さんが手掛けた「ロゴタイプの拡張」は、「明治おいしい牛乳」と同じロゴタイプの50音のひらがなが書かれた積み木を、自由に組み合わせて言葉をつくることができる体験型インスタレーション。同製品のロゴタイプをいつも目にしているからか、まったく関係のない文字を積み上げてもそれっぽく見えるから不思議です。
フードデザイナーの小沢朋子さんによる「調理における牛乳の役割」は、素材として料理に使われる牛乳の役割を「コクを出す」「滑らかにする」など6種類に分類して紹介するもの。ボタンを押すと、料理が乗ったお皿が役割ごとに光る仕組みになっています。これは押さずにはいられない......。
1Fショップスペースでは、展覧会でクローズアップした製品をそれぞれ1冊ずつ紹介した図録6冊セットを紹介。大作のため制作に時間がかかっているそうで、発売は11月中旬を予定しています。
また、オリジナルのTシャツやトートバッグなどのグッズも登場。"解剖"を彷彿とさせる、展覧会タイトルロゴをプリントした白衣もありますよ。
会期中には、解剖学者の養老孟司さんや、脳科学者の茂木健一郎さんらを招いたトークイベントなども開催。詳細はオフィシャルウェブサイトから確認することができるので、チェックしてみてください。紹介したほかにも、見て、触って、聞いて楽しめる作品が多数展示されているので、いつものあの商品の裏側を探りに出掛けてみてはいかがでしょうか。
編集部 五十嵐
information
「デザインの解剖展: 身近なものから世界を見る方法」
会場:21_21 DESIGN SIGHT
会期:10月14日(金)〜2017年1月22日(日)
開館時間:10:00~19:00※入場は18:30まで
休館日:火曜、12月28日(水)~2017年1月3日(火)
入場料:一般 1,100円、大学生 800円、高校生 500円、中学生以下無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://www.2121designsight.jp/