19世紀アール・ヌーヴォーを代表するフランスの工芸家、エミール・ガレ。有機的な曲線のガラス作品を目にしたことがある人も多いのでは? 国内有数のガレ・コレクションを擁するサントリー美術館が、オルセー美術館の協力を得て実現した同展には、選りすぐりの作品100件以上が集結。その様子をどうぞ。
展覧会のスタートは、器の側面にトンボがかたどられた作品から。解説文にはガレの「究極」と書かれていました。隣にはガレの工房責任者によるデッサンも展示され、比較することで技術力と表現力の高さがより伝わってきます。
展覧会は全5章で構成、まずはⅠ章「ガレと祖国」。ガレは1846年、フランス・ロレーヌ地方に生まれ、父から陶器・ガラス器の製造販売の家業を受け継ぎます。写真の、紋章に花文様を添えた食器セットはその工房の主力製品。愛国心が強く、フランスの伝統的な様式にこだわりがあったそうです。
Ⅱ章は「ガレと異国」。タイトルどおり、異国情緒あふれる作品が並びます。当時はパリやロンドンで万国博覧会が開かれ、アジアや中東の美術品が特に注目を集めていた時期。
中国製の小さいツボや瓶、日本の竹製の花器などは、ガレ自身が所有していたもの。こういったアジアの工芸コレクションからもインスピレーションを受けていたそうです。
続くⅢ章は「ガレと植物学」、植物をモチーフに作品をつくるだけでなく、研究論文を執筆するほど植物「学」にのめり込んでいったガレの姿が描かれます。
ちなみに、ガレが手がけたのはガラスの器だけではありません。こんな木製の家具も展示されていました。うねうねした右のテーブルは、「蓮」をモチーフにしたもの。
お次はⅣ章「ガレと生物学」。植物だけでなく、もちろん動物も大好きだったガレ。写真の蛾をかたどった作品など虫のほか、クラゲに貝、ヒトデと、その守備範囲はかなり広めだった様子。
最後のⅤ章「ガレと文学」では、文学者や知識人の残した一節を刻んだ作品が並びます。ぶどうをモチーフにしたこの作品には、ぶどうの素晴らしさを讃えるポエムが刻まれていました(胴体部分にうっすらと、読めますか?)。
そして、展示はこの「ひとよ茸」というランプで締めくくり。制作されたのは亡くなる2年前、いわばこれがガレの到達点。レプリカをよく目にしますが、やはり本物だからなのか、きのこのランプは妖しいムード満点。買えるものなら欲しい!
ちなみに、8月23日(火)には「まるごといちにち こどもびじゅつかん!」(http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/kids/ ※URLをクリックすると外部サイトへ移動します)と題して、サントリー美術館が小中学生とその保護者に無料で開放されます。ぜひ親子で訪れて、涼しげなガレのガラス作品を鑑賞してみては?
編集部 飯塚
information
「オルセー美術館特別協力 生誕170周年 エミール・ガレ」
会場:サントリー美術館
会期:6月29日(水)~8月28日(日)
開館時間:10:00~18:00
※金・土、7月17日(日)、8月10日(水)は20:00まで。入館は閉館の30分前まで
休館日:火曜日(8月16日は開館)
入場料:一般 1,300円、大学・高校生 1,000円
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2016_3/index.html