『センチメンタルな旅』とは、アラーキーこと荒木経惟さんの処女作で、最愛の妻・陽子さんとの新婚旅行を写した写真集。限定1,000部制作され、今では78万円ものプレミア価格で取り引きされています(今春、河出書房新社より復刊)。本展では、プラチナプリントで再現されたコンタクトシート18点、全653カットを展示中。その様子をお届けします。
「今回の展示は、プリント工房であり出版社であるアマナサルトが、作家さんの所有するオリジナルのネガからプリントを制作したんです」と教えてくれたのは、スタッフの波多野うららさん。
波多野さんも展示を機に復刊本を購入したそうで、「コンタクトシートを見ると、写真集に掲載した作品をどのように選んだのかがなんとなくわかるのも面白いところ」とのこと。写真は、左が原本で右が復刊本。
さて、こちらは写真集に書かれた序文。「これはそこいらの嘘写真とはちがいます。この『センチメンタルな旅』は私の愛であり写真家決心なのです」。今年76歳を迎える現在でも精力的に写真集を刊行し続けるアラーキーの決意表明です。
展示はセルフポートレート1枚と、コンタクトシート全18枚で構成。切れ目なくカットが並び、新婚旅行中の間の行動が手に取るようにわかります。パラパラマンガのように連続して見ることができるのは、コンタクトシートならでは。
写っているのはもちろんほとんどが陽子さんなのですが、気になるのはその表情。新婚旅行だというのに笑顔の写真は1枚もなく、私が想像する幸せカップルの姿とはちょっと違っていました。「荒木さんは、陽子さんの陰のある表情が好きだったそうです。だからかもしれませんね」と波多野さん。
撮影されたのは、今から40年ほど前。旅行先の京都と福岡の街並も写っていて、当時の様子を垣間みることができます。
そのほか、会場では写真集の販売も。これまでアラーキーが発表してきたのはなんと400冊以上! その中から厳選したレア本の数々が並んでいます。椅子も用意され、自由に手に取って読むことも可能。
たとえばスタッフの方がすすめてくれたのがこちら、『食事』(マガジンハウス)。「陽子さんの手料理を撮った写真ですが、ヌードよりエロティック」と話してくれたのですが、開いてみると......。
たしかに、なんとも生々しい料理写真が。これぞアラーキーの神髄、かもしれません。ちなみにこちら、プレミア価格で10万円というお値段!
個人的に、アラーキーの作品をしっかり観るのは今回が初めて。その原点とも言える『センチメンタルな旅』に加えて、レアな写真集の数々も観ることができて、世界的写真家の作品を存分に味わうことができました。
ちなみに、同じアクシスビルの2Fにあるタカ・イシイギャラリーでは、最新作「写狂老人A 76齢」展が開催中とのこと(6月29日(水)まで)。お好きな方はもちろん、私のような初心者の方もぜひあわせてどうぞ。
編集部 飯塚
information
「センチメンタルな旅 - コンプリート・コンタクトシート」
会場:IMA CONCEPT STORE(東京都港区六本木5-17-1 AXISビル3F)
会期:5月25日(水)〜7月23日(土)
休館日:月曜日・日曜日・祝祭日
入場料:無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://imaonline.jp/exhibition/sentimental-journey-the-complete-contactsheets.html