西暦79年、火山噴火によって一瞬で地中に埋もれた古代都市・ポンペイ。それゆえ当時の人々の生活や美術品がそのままの状態で残された遺跡は、特に壁画にみられる「ポンペイの赤」と呼ばれる色彩の美しさで知られています。本展で展示されている貴重な壁画作品をとおして、その魅力をご紹介します。
展示されている壁画は約80点、テーマごとに全4章に分けて展示されています。第Ⅰ章は「建築と風景」。ポンペイの壁画は時期ごとに様式に分類され、紀元前80〜15年頃は、写真のように三次元空間を描く様式が好まれたそうです。ご覧の通り、「ポンペイの赤」と言われるのも納得の赤さ。
壁画の制作に使用された道具も展示されていました。こちらは顔料の入った小皿。壁面に漆喰を塗り、その上から背景担当の画家や人物担当の画家が絵を描いていったそうです。全体を統括していたのは「親方」、今で言えばアートディレクターでしょうか?(笑)
第Ⅱ章「日常の生活」では、一部屋まるごと再現されていました。こちらは「カルミアーノの農園別荘」と呼ばれる建物の一室を立体展示で再構成したもの。16枚の壁画パネルがずらり、2000年前にタイムスリップできちゃいます。
荘厳な壁画だけでなく、こんなかわいらしい小鳥を描いた作品も。微笑ましい日常生活が想像できるなぁ......と思いきや、これはこれで巨大な壁画の一部だったもの。
第Ⅲ章のテーマは「神話」。当時はローマ時代でしたが、描かれていたのはローマ神話ではなく、それより前の時代のギリシャ神話。裕福な人々の間では必須の教養だったのだそうです。写真の皇帝崇拝の場「アウグステウム」から出土した作品群も、やはりギリシャ神話をモチーフにしたもの。
上の写真の中央の「赤ん坊のテレフォスを発見するヘラクレス」は、過去一度を除いてイタリア国外に持ち出されたことがない貴重な作品で、本展の目玉のひとつ。これが2000年近く前に描かれたものだというだけで驚かされますね。
最後を飾る第Ⅳ章は「神々と信仰」。壁画に描かれた神像など、当時の人々の信仰の様子がわかる作品が展示されていました。先に紹介したギリシャ神話の像も、自分たちの神として崇拝していたのだそうです。
ナポリ国立考古学博物館とポンペイ監督局が所蔵する非常に貴重な壁画コレクションが堪能できる本展は、日本とイタリアの国交150周年を記念して開催されています。今後、全国を巡回するそうですが、ここ六本木で観られるのは7月3日まで。6月9日(木)には、美術史家によるギャラリートークも開催されます。気になる方はぜひ訪れてみては?
編集部 飯塚
information
「日伊国交樹立150周年記念 世界遺産 ポンペイの壁画展」
会場:森アーツセンターギャラリー
会期:4月29日(金)〜7月3日(日)※会期中無休
開館時間:10:00~20:00(5月3日を除く火曜日は17:00まで)
※入館は閉館の30分前まで。
入場料:一般 1,600円、大学生・高校生 1,300円、中学生・小学生 600円
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://www.tokyo-np.co.jp/pompei/