「印象派」を代表する画家として、今でも多くの人々を魅了しているピエール= オーギュスト・ルノワール。世界でも有数のコレクションを誇るフランスのオルセー美術館、オランジュリー美術館所蔵の100点以上もの作品や資料を通して、画家ルノワールの全貌に迫る展覧会が国立新美術館で開催中です。中でも目玉は、日本初公開となる"印象派の最高傑作"「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」。その内覧会の様子をお届けします。
エントランスは、ルノワール直筆のサインがデザインされたもの。さらに光あふれる作風をイメージしたビジュアルが壁に投影されていて、世界観がうまく表現されています。歴史的な名画への期待感が高まりますね。
展覧会は全10章で構成。肖像画や風景画といったジャンルや、花や裸婦などのモチーフ別に、画業の変遷をたどっていきます。たとえばこのフロアには、早い時期から「私は人物画家」と自称していたルノワールの肖像画家が一面に。中でも得意としていたのは女性の肖像画で、小説家のマルセル・プルーストも「ルノワールの女」を絶賛したそうです。
こちらは、リウマチで動かなくなった手に筆をくくりつけて描いたといわれる、日本初公開となる大作「浴女たち」。描かれたのは死の数ヶ月前、晩年には伝統的なモチーフである裸婦像を多く描きました。印象派の画家として革新的な技法を試み続け、やがて伝統に回帰し、最後にはすべてを融合した境地へ......。全章を通して、そんな変遷が浮かび上がってきます。
一度は目にしたことがある名作の数々との出合いも楽しみのひとつ。2人の少女がピアノに興じる日常のワンシーンを描いた作品「ピアノを弾く少女たち」、教科書で見て印象に残っているという人も多いのでは?
こちらは、田舎と都会でのダンスの様子を描いたもの。19世紀当時のパリの人々の人生を楽しんでいる様子が生き生きと伝わってきます。作品を通して、ルノワールが生きた時代を垣間見られるのも興味深いですね。
そしてこちらが、傑作の呼び声高い「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」! 木漏れ日の中、パリの人々が愉快に踊り、会話する様子が描かれています。斬新な光の描き方で、1876年の発表当時も大きな話題を呼んだそうですが、140年経った今も、引き寄せられるように人だかりが。
ルノワールにまつわる資料もたくさん展示されていました。たとえば、ルノワールの息子で映画監督として知られるジャン・ルノワールの作品も上映。映画「フレンチ・カンカン」は、「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」の影響を強く受けているそうです。
さらに、同時代を生きたゴッホやピカソ、マティスといった、そうそうたる画家たちの作品の展示も! 写真はゴッホの「アルルのダンスホール」、ルノワールが描いた同じモチーフの作品と交互に展示され、まるで画家同士が対話しているかのようでした。
「絵とは、好ましく、楽しく、きれいなもの ―そう、きれいなものでなければならない!」。展覧会は、ルノワールのこんな言葉で締めくくられていました。パリの人々の生活にやさしく寄り添い、そこから見出した美しさを描き続けたルノワール。展示されていた数々の絵から、「この世界はそんなに悪くない、人生を楽しもう!」というメッセージが聞こえた気がしました。
編集部 飯塚
information
「オルセー美術館・オランジェリー美術館所蔵 ルノワール展」
会場:国立新美術館
会期:4月27日(水)〜8月22日(月)
※火曜休館、ただし5月3日(火・祝)、8月16日(火)は開館
開館時間:10:00~18:00
※入場は閉館の30分前まで。
※金曜、8月6日(土)、13日(土)、20日(土)は20:00まで
入場料:一般 1,600円、大学生 1,200円、高校生 800円 ※中学生以下無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://renoir.exhn.jp