六本木エリアのギャラリーを編集部スタッフの目線で紹介する「六本木ギャラリー探訪」。今回は六本木ヒルズと国立新美術館の中間地帯にある「ANOTHER FUNCTION」を訪れました。こちらは、多摩美術大学でも教鞭を執るサーフェスデザイナーの髙橋正さんが夫婦で運営。通常はアトリエとして、ときに画廊としてオープンするという、ちょっと変わったギャラリーです。
髙橋正さんは、今年3月にアクシスギャラリーで個展を開催したばかり。フロアにはそのとき展示したプリント生地やカーペットが置かれていました。この空間、ふだんは髙橋さんのアトリエ・事務所として使われ、年に数回はギャラリーとして若手アーティストの展示に利用されています。
「もともとは2007年に麻布台でスタートしたんです。2010年にここに移転しましたが、これまで一貫して行ってきたのが、多摩美術大学の同僚でもある、美術史学者の本江邦夫さんによる企画展。8年間で24人のアーティストを紹介してきました。今ちょうど、その展示をまとめた本を制作しているんですよ」
VOCA賞を当時最年少で受賞した鈴木星亜さん、IMA CONCEPT STOREでも展示を行った山本渉さん、、Tokyo Midtown Awardのアートコンペで優秀賞を受賞した小林万里子さん......。髙橋さんいわく、取り上げたアーティストの多くはここで展示を行ったあと、さらに活躍を続けているそうです。
鈴木紗也香さんは、前述の鈴木星亜さんの記録を更新してVOCA賞を最年少で受賞した、現在注目のアーティスト。写真は2015年の展示の様子で、ふだんは椅子代わりにしている十字架型の什器を活用、テーブルを片付け、広々としたホワイトキューブになっています。
ちなみにテーブルはこんな壁の隙間に畳んで収納できます。そのほか裏返すと棚になる什器などなど、随所に工夫が。「若手アーティストの支援って言っていますけど、スペースがもったいないから、この場所を介して作品や人と会いたくて始めたようなもの(笑)」と奥さんの髙橋佳子さん。また、正さんは「本業ではないからこそ、長続きしているのかなぁ」とも。
「本江さんシリーズのほか、僕たちがここで展示をするのは、誰かとの出会いがきっかけのことが多いんです。ヘルシンキで偶然出会ったユッシ・アアルトもそうだし、直近で展示を行った傍島利浩さんも、ご縁があってデビュー前に知り合ったフォトグラファー。計画的にギャラリーを運営しているわけではなくて、だから同業者には『甘いよ』なんて言われますけどね(笑)」
とはいえ、六本木との関わりは深く、国立新美術館で開催される「五美大展」とタイミングを合わせて行う展覧会「Roppongi α Art Week」に参加するギャラリーのひとつであり、今年の六本木アートナイトに合わせたイベント開催も検討中。今後は、正さんの作品展示も行うことを考えているのだとか。
「今はちょうど、これまでの活動をまとめるタイミング。これからも新たな出会いがあれば展覧会を行っていきますよ」と話す髙橋さんご夫妻。ちなみに、本江邦夫さんの企画展シリーズをまとめた本は5月には完成予定とのこと(気になる方はギャラリーまでお問い合わせを)。
ギャラリーがあるのは「アトリエ アバンティ」という、クリエイター向けのオフィスビル。髙橋さんご夫妻、この建物を設計した建築家とも偶然ながら縁があったそう。不思議な出会いがたくさん詰まった、とても居心地のいいギャラリーでした。
編集部 飯塚
information
「ANOTHER FUNCTION」
住所:港区六本木7-20-2 アバンティ407
TEL:03-6447-2786
開廊時間・休廊日:不定休
http://fudeya.net/gallery/