六本木エリアのギャラリーを編集部スタッフの目線で紹介する「六本木ギャラリー探訪」も、いよいよ10回目。今回ご紹介するのは、乃木坂駅から徒歩1分、ビルの3階にある「gallery ART UNLIMITED」です。現在は「西ノ宮 佳代 2016 Beloved Animals」を開催中。ちなみに西ノ宮さんは、先日このブログでも紹介した国立新美術館の「18th DOMANI・明日展」にも参加していました。
作品集を手にお話を聞かせてくれたのは、オーナーの高砂三和子さん。東京芸術大学で美術史を学んだのち、文化やアートの発信に力を入れていた西武百貨店でコンテンポラリーアートギャラリーやセゾン現代美術館などで、現代美術の仕事に長年携わってこられました。
高砂さんがこのギャラリーをオープンしたのは10年前、まだ国立新美術館が開館する前のこと。その国立新美術館に勤める友人から、「六本木がこれからアートの街になっていく」と聞いたことがきっかけでした。ちなみにそのご友人、現在は副館長を務めているのだそう。
フロアの中央にはテーブルとイス。その理由は、高砂さんの「ギャラリーをサロン的空間にしたい」という思いから。親密な空間で作品を眺めながら、作家や顧客とお茶を飲んだりおしゃべりしたり。好きな作品について語ることは、自分自身を語ることでもある、と高砂さん。
「アーティストが生活していくためには、作品を買ってくれる人が必要なんです。ギャラリーや美術館を訪れても、『買う』という意識で作品を観ることはそんなにないのではありませんか? まずは一番気に入った作品はどれかなという目線で、リラックスして観ることが入り口になるかもしれません」
「また、若手作家の作品を購入したら、作家ともに自分の人生も成長していくような気持ちを味わうことができます。それが現代アート、つまり今を生きるアーティストの作品を買う面白さではないでしょうか」
こちらの「猫だるま」は、予約リストまでできているほどの人気のシリーズ。画像は「拾玖ノ姫(じゅうくのひめ)・愛」(2015年)。
さらに、ギャラリー名の「ART UNLIMITED」の意味をたずねてみると......。
「アーティストのクリエイティビティは無限大で、アイデアも思想も限りなく生み出されます。......だからといって、展示できないほどたくさんの作品を持ってこられても困っちゃうけれど(笑)。私たちみたいにアートをマネジメントする側にとっては、無限大であることって、喜びでもあるし、苦しみでもあるんです!」
西ノ宮さんの作品は、大理石でつくるモザイクという伝統的な手法でつくられていながら、貝殻や割れた陶器など現代的な異素材も取り入れ、立体としている点が特徴だそうです(写真は「Elegance」(2015年))。伝統を更新していく姿勢は、まさに高砂さんのいう"無限大のクリエイティビティ"の現れかもしれません。
中には、こんなかわいらしいサイズの作品も(福来猫マトリョーシカストラップ、2016年)。西ノ宮さんはオーダーを受けて作品をつくることもあるそうです。飼い猫をモデルに制作してもらったり、すでに売れてしまった作品を気に入って、還暦を迎えたお祝いに同じテーマで作品をオーダーしたり。こんなふうに、アーティストとリアルタイムでやりとりできることも、現代アートを買う魅力のひとつだと教えてくれました。
これまでギャラリーを訪れても、アートを買うきっかけがなかなかつかめなかった私。今回、高砂さんのお話を聞いて「そうか、還暦とか人生の節目に買えばいいのか!」と気づかされました。まずはその日に備えて、部屋を片付けて場所をつくろう......と、ギャラリーをあとにしました。
編集部 飯塚
information
「gallery ART UNLIMITED」
住所:東京都港区南青山1-26-4 六本木ダイヤビル3F
TEL:03-6805-5280
開廊時間:13:00~19:00
休廊日:日曜、火曜、祝祭日
http://www.artunlimited.co.jp
作品画像©Kayo NISHINOMIYA 協力:ギャラリー・アートアンリミテッド