六本木未来会議に登場してくれたクリエイターのみなさまが推薦してくれた本を毎週紹介していきます(紹介する本の一部は2014年に開催した「森の学校」の図書室と、2015年に開催した「六本木ブックフェス」でも展示したものです)。
今回は、卯城竜太さんが選んだ、『カムイ伝(1巻)』(著・白土三平/小学館)。
卯城さんのコメント
子どもの頃より幾度となく読み直し、人生に深刻な影響を与えたマンガ。僕にとってこれ以上重要な本は過去にも未来にもあり得ない。
まずは幼ない時に、忍者の神業や被差別人たちの悲喜交々にうなり、ヒロイックな革命家の悲劇に憧れた。
次に思春期の時に、徳川の秘密を巡る冒険活劇と、アンダー18への容赦など微塵もない裸の女たちに欲情した。
更には大人になって、細かいディテールと歴史を俯瞰した壮大な物語から、社会進歩の法則を知って目が覚めた。
そして今は何故か改めて、アウトサイダーと言ってもいいような、模倣を許さない古く大胆な白黒の絵柄と描写力に惹かれている。
あまりに全てがリアルな『カムイ伝』に価値観を支配された僕は、今やこれが現実かバーチャルかなんてことはどうでもよくなっていて、日本の最も重要な革命家は坂本龍馬でも聖徳太子でもなく、エタ非人と百姓の連合一揆を成し遂げた下人の子、庄助であるとさえ思っている。ということで社会への期待をこめて提案をひとつ。
大名の活躍の焼き直しに飽きられ視聴率に行き詰まった大河ドラマの突破口は、まさにこの『カムイ伝』だとNHKに進言しておきたい!
江戸時代の身分制度が厳しい徳川封建社会による差別から生まれる貧困や怒りを描写するコミック本。主人公は身分階級の最底辺の「非人」カムイ、「農民」正助、「武士」竜之進の3者。それぞれの階級での生き方を追いながら、人間の本質を考える哲学書のような一冊です。
卯城さんのインタビューもあわせてどうぞ。
クリエイターインタビュー #27
卯城竜太(アーティスト Chim↑Pom)
http://6mirai.tokyo-midtown.com/interview/27/