「DOMANI・明日展」は、文化庁の支援を受けて海外研修を行った若手アーティストの成果発表の場。今回は「表現と素材 物質と行為と情報の交差」というテーマで選ばれた12名の作品を展示、絵画や彫刻だけでなく、染織にモザイクに映像と、本当に多彩な表現が集まっています。開催前日に行われた内覧会の様子をどうぞ。
まず皆さんにお伝えしたいのは、展覧会名の通り「これからのアート」が集った展覧会であるということ。出典作家12名の新鮮な世界観がそれぞれのフロアに凝縮され、次々と目を楽しませてくれます。中でも、特に気になった展示をいくつかご紹介。
まずはこちら、日本画を専攻しブラジルで研修した木島孝文さんの「A.R. #496 "Citrus" Paraiso」から。このダイナミックな作品は、セメントと日本画材を組み合わせたもの。木島さんは「自分の価値観を壊さざるを得ない環境」を選んでブラジルに渡ったそうです。
この作品は絵ではなく、あるものを使って制作されたのですが、何だかわかりますか? 正解は「綿」。作者の線幸子さんは、綿と出会って30年、その可能性を探り続けてきた人。この作品、ずっと眺めていても不思議と飽きないんです。
イタリアの工房で伝統的なモザイクの技法を学んだ西ノ宮佳代さんの作品もユニーク。鳥が額からはみ出していますが、これ、トリックアートじゃないですよ。
「平面か立体か。そして、何故平面であったものを、立体として表現するのか」とは本人の言葉。平面と立体の中間というこの作品、いろんな角度から眺めたくなります。
野田睦美さんは染織作品をつくり続けているアーティスト。パリ国立美術高等学校で美術織物を研究したそうです。写真は2.5×3.6m、「情念」というタイトルの作品なのですが、近寄ってみると......。
赤と黒の織物の中から、うねうねと針金が飛び出ていました。これはなかなかすごみがあります! というか、怖い。
同じく繊維を扱った作品でも、こちらは油絵。作者の古川あいかさんは「はいだ布団」や「脱ぎ捨てた衣類」をモチーフとしているそうで、このほか、どの作品もしわくちゃな布ばかりが描かれていました。
今回の展覧会のメイングラフィックにもなっているのは、松岡圭介さんの「a tree man」。手と足が一体化し、表面は脳のシワのようなテクスチャーになっている作品は、観ているだけで伝わってくる迫力が。
作品のほか、保存・修復分野の研修生による発表もありました。写真はイタリアでフレスコ画の修復を学んだ奥村祥子さんの展示で、修復過程を解説したパネルも。こういう仕事を知る機会はなかなかありませんよね。
ご紹介した以外にも、展示作品はまだまだたくさん。しかも、どの作品も新鮮でしかもバリエーション豊か。新しいものと出会いたい方は必見です。
編集部 飯塚
information
「DOMANI・明日展」
会場:国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2)
会期:12月12日(土)~2016年1月24日(月)10:00~18:00
※金曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
休館日:毎週火曜休館、12月22日(火)~2016年1月5日(火)は年末年始休館
入場料:一般 1,000円、大学生 500円