現在、東京ミッドタウン・デザインハブで開催されているのは、さまざまな大学の建築系学科で行われている「設計課題」を集めた展覧会。模型だけでなく、スケッチや本、家具まで、学生による成果物がそのプロセスとともに展示されています。大学によって展示内容も課題もさまざまで、なおかつ、主な展示がこれから世に出る学生の作品という、ある意味"最先端"ともいえる建築デザインの展示をご紹介します。
会場入り口には、それぞれ異なるデスクランプに照らされた各大学のパンフレットがズラリ(製図室をイメージした展示とのこと)。今回参加しているのは11大学の建築系学科、特に造形やデザインにかかわる研究室が、武蔵野美術大学建築学科の呼びかけで集まっています。たくさんの大学が共同の展覧会という形で集うのは、非常にまれなことなのだとか。
奥に進むと、テーブルごとにそれぞれの大学の成果物が展示されていました。同じ「建築」という枠組みなのに、パッと見渡しただけでも、模型あり、家具あり、ボードありと実に多彩な内容。その中で気になったいくつかの展示をご紹介します。
まずはこちら、筑波大学芸術専門学群デザイン専攻建築デザイン領域の展示から。「代官山ヒルサイドテラスの隣接地に集合住宅を設計する」というお題で、学生の制作のプロセスがそのまま展示されています。
「ファサードが重すぎる」「テラスよい」「この穴いる?」など、模型のあちこちに貼られたふせんに、検討を重ねた様子がうかがえる言葉が。まさに試行錯誤のあとがみられるのが面白いところです。
東京藝術大学美術学部建築科の課題は「『食』を広く捉え直し、通常のダイニングチェアとは異なる『食―椅子』のデザインを『ちょっとしたフルーツ』を添えながら思い描いて下さい」というもの。こちらの作品は果物型のクッションが敷き詰められていて、八百屋の軒先の風景に溶け込むというコンセプト。
東京理科大学理工学部建築学科は、「光の箱(空間デザイン及び演習Ⅰ)」という課題の展示。段ボールの中の空間が、箱に開けた穴からの光でどのように変化するかをつかむための1年生の授業の課題だそうです。「どれどれ、成果を見せてもらおうか」と先生気分で穴を覗いてみると......。
中はものすごく美しくつくり込んでありました。段ボールむきだしの外側と内側のギャップが面白い。
こちらの緻密かつ迫力ある模型群は、東洋大学建築学科のもの。大宮区役所と大宮小学校の敷地にコンベンション施設の提案を行うという課題です。ちなみに、指導教員のひとりはクリエイターインタビューにも登場した建築家の藤村龍至さんです。
そのほか、こんなミニチュア家具(?)が置かれた住空間が展示されていたり......(早稲田大学創造理工学部建築学科)。
制作過程での先生からの講評をマンガのように表現したり......(武蔵野美術大学建築学科)。とにかくバリエーション豊富で飽きることがありません。
展示内容の多彩さは、大学ごとの教育方針の違いだけでなく、建築の未来の方向性の多様性も示しているのかもしれません。今よりもちょっとだけ先の都市や建築に思いを馳せることができる、そんな展覧会でした。
ちなみに、会期中は毎週土曜日に各大学の教員によるレクチャーやワークショップも開催されます。興味のある方はぜひチェックしてみてください。
編集部 飯塚
information
「ラーニング・アーキテクチャー2015|建築、学びの冒険─大学の建築設計課題の動向展」
会場:東京ミッドタウン・デザインハブ(東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー 5F)
会期:11月20日(金)~ 12月26日(土)11:00~19:00
入場料:無料
出展大学:筑波大学芸術専門学群デザイン専攻建築デザイン領域、東京藝術大学美術学部建築科、東京大学工学系研究科・建築学専攻・Advanced Design Studies、東京理科大学理工学部建築学科、東洋大学理工学部建築学科、法政大学デザイン工学部建築学科、明治大学大学院理工学研究科、横浜国立大学大学院建築都市スクールY-GSA、早稲田大学創造理工学部建築学科、Architectural Association+東京藝術大学ワークショップ、武蔵野美術大学造形学部建築学科