師走に入り木々の落葉も始まり、いよいよ冬の気配が感じられる今日この頃。外出日和が続いて気持ちの良かった9~10月に恋しさすら覚えてしまいますね。
さて、ここで改めて、行楽客で賑わう秋の東京ミッドタウンをより色濃く彩っていた、新進気鋭アーティスト6組によるTokyo Midtown Award 2015アートコンペ門の入賞作品を"特別限定カット"で振り返ってみたいと思います。
まずは、優秀賞となった4作品からです。
写真: 谷 裕文 / Photograph by Hirofumi Tani
【優秀賞】 作品名:「グランドライン」 作家:尾花賢一さん
"正体不明の覆面を被った人達。彼らは扉の前で行列をつくる。この先には何があるのか、なんのために並んでいるのか。明確な答えは分からないけれど、想像すると幾つものドラマが生まれてくる。点在する情報を集めて、繰り広げられる物語を考えるのはあなた自身。それはあなたが作り上げたもの。作品を前にして、あなたとわたしの物語を一緒に語り合おう。きっとそこには新たな出会いと、多様な価値を受容する美しい未来への第一歩が生まれるのだから。(作家コメント)"
総勢10名近い行列像です。
目に入れば一瞬びくっとしてしまう覆面小人たちですが、ポップな色合いとのギャップになんだかほっこりします。
彼らは何を買うためにお店に並んでいるのでしょうか。
【優秀賞】 作品名:「Ebb」 作家:風間天心さん
"各家へお参りに行くと、床の間には多くの文化が同居していることに驚きます。特に「水引」という文化に、仏教や神道といった「信仰」ではない日本独自の「こころ」を感じました。日本は現在、社会的にも物理的にも大きな波の危険に晒されていますが、どんな波に飲まれても文化は形を変えて残ります。中国の文化を日本流にアレンジした水引ですが、それを再度アレンジし、信仰に依存しない「新たな形の祭壇」を残そうとしています。(作家コメント)"
壁、中央の神棚、手前に張った糸はすべて水引で出来ています。前を移動しながら作品を見ると、手前の糸と壁の縦線とでモアレ現象が引き起こされ、何とも不思議な感覚を覚えます。
側面が鏡になっていて、奥に奥にイメージが続いていきます。
こんな色合いの水引があるのか!と驚かされる極彩色です。
【優秀賞】 作品名:「DEADPAN」 作家:阿部岳史さん
"普段意識しない「死」の状態を再現することがテーマです。普段生活している多くの人にとって「死」とはあまり意識上に上がってこないと思います。 「割といつも近くにいるよ。」と言わんばかりに無表情で見つめている「死」。時折、存在を思い出し、恐怖ではなく静かな畏敬を感じる「死」。「生」が溢れているこの場所で、ひっそりと佇む、淡い「死」を目にすることは、人生の中の死の存在そのものように感じます。(作家コメント)"
こちらは夜に撮影したカット。ゆらりとした素材感・ライティングで、見事に作品の重さを感じさせない「浮遊感」を演出しています。
接写で撮影した1枚。作品がキューブ状のグリッド(真鍮製)で全体が構成されていることがわかります。
【優秀賞】 作品名:「未確認生命体」 作家:三上俊希さん
"突如出現した何かが鼓動を始めた。産み落とされたのか、異次元から現れたのかはわからない。 それは今にも内部から何かが飛び出してきそうだ。何かはわからないが中に生命体がいるのは確かだ。(作家コメント)"
空気が入って一斉に触手が膨らんでゆき・・・
順番にパタパタとしぼんで倒れていきます。この作品の強烈な色合いと人を驚かせる動きには、「人間がコントロールし難いエネルギー」もモチーフとして表現されているのだとか。この作品は、一般の観客の方が審査員になって人気作品を決める「東京ミッドタウン・オーディエンス賞」も受賞しています。
続いて、準グランプリ作品、グランプリ作品です!
【準グランプリ】 作品名:「東京的遭遇: 六本木」 作家:上坂 直さん
"地下から地上へ繫がる出口。 そして、出口に切り取られた地上の風景との断片的な出会い。莫大な地下空間を移動できるようになった我々にとって、それはどこか不安を伴うような、都市的かつ東京的な入口だ。ロッカーという画一的な佇まいと不明瞭な空間性をもつアイテムを都市への扉とし、様々なものが断片的には垣間見えながらもその内側の不明瞭さが増大し続ける、そんな現代における大都市「東京」の在り方への違和感を込めたい。(作家コメント)"
階段の上(ロッカーの奥)を見上げると、地上の風景と小さく動く人物が見ることができます。
ロッカーには全部で3つの階段が埋め込まれています。どれも本物と見紛うリアリティです。
【グランプリ】 作品名:「五金超大国Ⅱ」 作家:田島 大介さん
"自分自身の居場所や存在意義を見失ったとき、孤独や不安を満たしてくれる自分だけの世界に閉じこもりたいと願いました。この作品は憧れや切望するものだけに囲まれた自分の心の居場所であり、自分が信じることができる世界の姿です。(作家コメント)"
寄りの一枚。看板を支える柱や看板の文字までが丁寧に書き込まれています。
中距離からの一枚。今にもビルの上からすべり落ちてしまうような引力・重力感を感じます。
以上が、Tokyo Midtown Award 2015の入選6作品でした。
本アワードは、今回で8回目を迎える、若手作家の登竜門。審査員は、六本木未来会議でもクリエイターインタビューで登場していただいた、アーティストの中山ダイスケさんや八谷和彦さんが名を連ねます。
どの作品も通行人の興味を引き、ついつい足を止めさせてしまうパワー・表現力が込められた、非常にクオリティの高いアート作品だったと思います。各作家さんの今後のご活躍が楽しみです。
また同時開催されていた、デザインコンペの入選作品については、以下のアワード公式ホームページにて詳細を見ることができます。 http://www.tokyo-midtown.com/jp/award/result/2015/design.html
会期中、デザインコンペ作品展示の様子(東京ミッドタウン)
これらのデザイン作品の展示については、東京ミッドタウン内、サントリー美術館入口横の展示スペースにて来秋まで見ることができます。是非、サントリー美術館へお越しになった際には、立ち寄ってみてください。
information
展覧会名:「Tokyo Midtown Award 2015 受賞作品展示」 ※本年は終了
会場:東京ミッドタウン プラザB1F展示スペース
会期:2015年10月16日(金)~ 2015年11月8日(日)
URL: http://www.tokyo-midtown.com/jp/award/index.html