森美術館で開催中の「村上隆の五百羅漢図展」プレス内覧会へ行ってきました。ご存知のとおり、村上隆さんは世界に日本のサブカルチャーを知らしめた第一人者。日本での個展は2001年以来、実に14年ぶりとなるそうですが、村上隆と五百羅漢――なんだか意外な組み合わせ。一体どんな村上ワールドが待ち受けているのでしょうか?
最初に出迎えてくれたのは、「円相」シリーズという6つの連作に描かれた、マンガタッチの村上さんの自画像。円相とは禅で悟りや真理を表すシンボルだそうで、だんだん村上さんが消滅し、ひとつの円相だけが残されるという「無」へのプロセスが描かれています。
次のフロアには、中央に金ぴかの彫刻が。554個の目、105本の髭、1200本以上の歯があるモンスターのような様相で、タイトルは「宇宙の産声」(2005年-)。村上さんは「達磨」と呼んでいるそうです。こちらは10年に近い歳月をかけ、まだ制作途中とのこと。
同じフロアには、極楽をイメージさせる美しい色合いの絵巻風の作品も(「宇宙の深層部の森に蠢く生命の図」部分、2015年)。絵の背景には無数のドットが描かれていて、際限なく広がる色の世界に吸い込まれそうになりました。
こちらは一面、白の世界。右から、「南無八幡大菩薩」「真っ白シロスケ」「君は空洞、僕も空洞」(すべて2015年)。真っ白とはいえ、何も描かれていないわけではなく、近寄ってよーく見ると、実は無数のドクロが描かれているんです。
そしていよいよ、メインテーマでもある「五百羅漢図」が登場! 東西南北を司る四神「青龍」「白虎」「朱雀」「玄武」の名が付けられた4面で構成され、それぞれ高さ約3m、長さは25m、全長なんと100mという超大作です。写真は「朱雀」。
こちらはポスターなどのメインビジュアルにもなっている「白虎」。
「白虎」の対面には「青龍」が展示されています。
最後に、こちらが「玄武」。完成形としては世界初公開だそうです。
4面合わせて100mに及ぶこの巨大な絵画、実は全国から200名以上の美大生を集め、24時間体制で一気に描きあげたもの。学生たちのシフト表や村上さんの指示書など、「五百羅漢図」の制作プロセスがわかる資料も展示されていて、制作の舞台裏を垣間みることができます。
最後のゾーンは「現在・過去・未来」と題した、ドクロで覆い尽くされた世界。生きとし生けるものはやがて「ドクロ」となる......。そんな無常観がどの作品にも投影されているようです。
ちなみに、左は「萌える人生を送った記憶」(2015年)、右は「知りたくないことであったのだが...実は...死んでも、魂は生き続けるらしい。そんなに...何万年も、何十億年も魂が劣化しないとは言えないであろうに。」(2015年)。もはや、タイトルだけをとっても作品として成立しそうです。
そしてフィナーレは、村上氏自身の芸術家としての葛藤や苦しみが文字で描かれたこちらの作品(「馬鹿」2012年)。離れてみると、ある二つの文字が浮き上がってきます。作者の自嘲のようでもあり、決意表明でもあるような言葉、ぜひ会場でお確かめを。
ちなみにプレス内覧会のこの日、村上さん本人も説明会に登壇(右から2番目)。キラキラしたスーツをお召しの村上さん、まるでご自身が作品のようです。
五百羅漢、釈迦、達磨といった仏教芸術のモチーフを、村上さんが独自の解釈で再構築した今回の展示。そもそも村上さんは、東京藝大大学院の美術研究科(日本画)出身、伝統と現代の融合という新たな境地を垣間見た思いがしました。
編集部 飯塚
information
森美術館「村上隆の五百羅漢図展」
会場:森美術館(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53F)
会期:10月31日(土)~ 2016年3月6日(日)10:00-22:00
※火曜日は17:00まで、入場は閉館の30分前まで。
※会期中無休
入場料:一般1600円、高校・大学生1100円、4歳~中学生600円
http://www.mori.art.museum/