現在、21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「建築家 フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea"」。ディレクターを務めた建築家・田根剛さんが「アイデアの展覧会」だと言うように、こちらは発想のプロセスにフォーカスした展覧会。どんな内容なのでしょうか?
訪れた日はオープン前日のプレスプレビュー、ゲーリーさん本人が出席してQ&Aセッションが行われていました。ゲーリーさんの作品は、スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館をはじめ、巨大かつぐにゃぐにゃとした形状で、どの作品もインパクトの大きい建築ばかり。建築界のノーベル賞といわれている「プリツカー賞」を1989年に受賞するなど、世界的に著名な建築家です。
まず印象に残ったのは、しわが入った巨大な紙。これは、ディレクターの田根さんが展覧会を構成するうえでベースとなった、ゲーリーさんの「マニフェスト」。「やりたいのは、新しいアイデアを生むことだけ」など、魂を削ってアイデアを生み出してきたことが、自身の率直な言葉で語られています。
「マニフェスト」だけでなく、会場には至るところにゲーリーさんの言葉が。私が気になったのはこの言葉、「間違った道を行っている時は、簡単すぎるか、何かのクリシェにはまり込んでいる時です」。建築家でなくとも、ドキっとさせられませんか?
こちらは「ゲーリー自邸」の模型。実際に家の周囲に壁をつくり「家の外側に家をつくる」ようにして改築したものだそう。無秩序な感じが香港の九龍城のようでかっこいいのですが、実際に住んでいたというのがさらにすごいところ。
ほかにも、本人のインスピレーションの源ともいえるような、ゲーリーさんのパーソナル・コレクションの一部を集めた展示も。絵画やオブジェなどの中には、日本の古い小説の英訳版があるなど、日本への関心も高かった様子。
次のフロアでは、6つのプロジェクトを取り上げ、完成に至るまでのプロセスを、模型やスケッチで見せていく展示が。たとえば写真は「ル・ルボ脳研究所」の場合。スタートはさまざまな素材で形状を検討して......。
紙でぐにゃぐにゃの形を切り貼りしたら......。
最終的にこんな模型が完成。これがそのまま建築物になっているのだから驚きです。
模型を見たあとは、壁一面に次々と映し出される建設現場の写真に見入ってしまいました。展示されているぐにゃぐにゃした模型と同じ形に建物を建てているのは職人なんだ......という当たり前のことに驚かされます。
もちろん、職人だけがつくっているわけではありません。最先端の設計技術「ゲーリー・テクノロジー」の紹介も。こちらはビジュアルデザインスタジオWOWが映像解説を担当。
そのほかにも、メインビジュアルでゲーリーさんが腰掛けている段ボール製のソファ(どんな座り心地なんだろう......?)などプロダクトの展示なども。
現代を代表する建築家の作品展としてはもちろん、作品だけを観ていたらわからない思考の過程までを紹介する本展。「いいアイデアが浮かばない」なんて悩んでいる人はぜひ訪れてみては。きっとたくさんの刺激を受けますよ。
ちなみに、表参道のルイ・ヴィトンでも、10月17日(土)から2016年1月31日(日)まで、ゲーリーさんの作品「ルイ・ヴィトン財団」の建築プロジェクトを紹介する展覧会「フランク・ゲーリー / Frank Gehry パリ - フォンダシオン ルイ・ヴィトン 建築展」を開催中。ご興味がある方は、こちらもぜひ。
編集部 飯塚
information
「建築家 フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea"」
会場:21_21 DESIGN SIGHT
会期:10月16日(金)~2016年2月7日(日)10:00~19:00
※火曜休館、年末年始休館(12月27日〜1月3日)
入場料:一般1,100円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料
http://www.2121designsight.jp/
「フランク・ゲーリー/ Frank Gehry パリ - フォンダシオン ルイ・ヴィトン 建築展」
会場:エスパス ルイ・ヴィトン東京
会期:2015年10月17日(土)~2016年01月31日(日)
※2016年1月1日休館
入場料:無料
http://www.espacelouisvuittontokyo.com/ja/