国立新美術館で開催中の「ニキ・ド・サンファル展」内覧会へ行ってきました。ニキ・ド・サンファルは、画家・アッサンブラージュ作家・彫刻家・パフォーマー・映画作家と多彩な顔をもつ、20世紀を代表する芸術家のひとり。今回の回顧展の規模は、国内史上最大とのこと。
まずは、1950年代後半からの、ニキが芸術の世界に足を踏み入れた頃の作品から。写真は「緑の空」というアッサンブラージュ(立体コラージュ)作品。おもちゃの銃や乳児の靴などが石膏で埋め込まれていて、かわいらしい雰囲気。でも、ここから次第に作風が変貌していきます。
こちらは、先ほどの作品から数年後、1960年にはじめた新しい表現手法「射撃絵画」で生み出された作品群。「射撃絵画」とは、絵具を入れた缶や袋ごと石膏で固めたレリーフをつくり、それを銃で撃って完成させるというもの。
こちらはひとつ前の写真の部分アップ。「おどろおどろしい」という表現がぴったり。埋め込まれた缶に、弾丸によるものらしい穴があるのですが、わかりますか?
1960年代からは、射撃絵画から一転、「女性」が作品の主題となっていきます。写真手前は、「白の出産、あるいはゲア」という、アッサンブラージュの手法が駆使された作品。日本の土偶にも通じるような、宗教的な雰囲気も感じられました。そして、さらにここからも作風が変化します。
いきなり、すごくポップなテイスト! 描かれているのは「ナナ」というキャラクター。友人が妊娠した姿にインスピレーションを得て生み出され、1965年以降、自由を謳歌する女性のシンボルとして繰り返しさまざまな作品に登場します。目にしたことがある人も多いのでは?
時代は飛んで、1999年の作品がこちら、タイトルは「ブッダ」。ころんとしたフォルムはナナを思わせますが、神々しさがすごい。2011年に閉館したニキ美術館の創立者・増田静江さんに捧げられた作品だそう。ちなみに、本展覧会の写真撮影は基本的に禁止ですが、この作品はOKです。
そして最後は、ニキが20年以上を費やして完成させた公園「タロット・ガーデン」の展示。もはや神々しさを超えて、極楽かと思わせる空間が広がっていました。この公園、実際にイタリアで現在も一般に公開されているそうです。
今回展示されているのは、トータルで150点以上の作品。紹介した以外にも、ニキが増田静江さんに宛てた手紙など、見どころはたくさん。
どの作品にも強烈なインパクトが感じられて、観賞後、ひとりのアーティストの生涯を追体験したかのような気持ちになりました。
編集部 飯塚
information
国立新美術館「ニキ・ド・サンファル展」
会場:国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2)
会期:9月18日(金)~ 12月14日(月)10:00-18:00
※金曜日は20:00まで、入場は閉館の30分前まで。(毎週火曜休館、ただし11月3日(火)は開館、11月4日(水)は休館)
入場料:一般1600円、大学生1200円、高校生800円
http://www.niki2015.jp